風に恋したキミと
「は?」
何言ってんだコイツ?とでも言いたそうな表情の桐島。
「いいの!何でもない」
わたしはフイっと桐島から視線を外す。
ベッドの下にはさっきまで走ってた時に履いてたスパイクが無造作に投げられていた。
本当、どこまでもこの人は走ることが大好きな人なんだ。
自分が限界を超えて倒れることだってちっとも恐れてない。
この人、いつか走りすぎて死んじゃうんじゃないの?ってこっちが心配になっちゃうけど……
また今度倒れても、わたしが必ず走って助けに行くからねと
本人には言えないけど、心の中でそっと呟いた。
なんだかそう思って照れてきたわたしは「わたし、先行くね!」と言って、乱暴に渡したエナメルバッグを元に直して救護室を後にした。