あきらめない ~ 青空の下のマウンド ~
「病院だ…」
お父さんが静かに答えた
病院?
なんで…
あ…
そういえば私、車にひかれたんだっけ…
上体を起こそうと、右手を動かそうとする
自分の利き腕
痛みはない
でも、動かない
首を少しだけあげて右手を見る
するとそこには、包帯でグルグル巻きにされた右肩と右手があった
「お父さん…これ…」
私がそう言うと、お父さんは「大丈夫だ」と言った
「全治するのには時間はかかるが、これからの生活に支障が出ることはないそうだ」
「・・・野球は?」
「それは…」
口を濁してしまったお父さんにもう一度同じことを聞く
「野球は…?!」
「野球はできる。
でも、投手は無理かもしれない…」
お父さんはそう言って、下を向いた
投手を、諦める…?
そんなの嫌だ
辞めたくない
諦めないって決めたばかりなのに…!
そう思った
でも、なにも言えなかった
「そっか…」
こうなってしまったのは、急いで帰ろうとした自分のせい
だから、そんなこと言えない