眠れぬ夜に
まさし君
私の幼少期の記憶…
まだ小学校にあがる前の話…

私達はいつも三人で遊んでいた

私と
つとむ君と
まさし君

いつも三人だった

つとむ君は私の一つ歳上で、父の従兄弟にあたる

まさし君は近所に住む同い年の男の子

私達はいつも一緒で
私の家
親戚のおばさんの家
どこに行くにも一緒だった

まさし君は泣き虫で
私とつとむ君はいつもまさし君をからかっては泣かせていた

いつの頃からか
私達はまさし君と遊ばなくなった

何故かは覚えていない

小学校に通う頃には
私はまさし君のことなど忘れていた

中学生となり
押入れの奥からアルバムを見つけた

懐かしみながら見ていると
ふと、まさし君のことを思い出した

そう言えばアイツ今頃どうしてんのかな
ぼんやりとそんなことを考えていると
無性に気になり始めた

父に聞いてみる
『なぁなぁ、昔まさし君っていたじゃん?アイツ引っ越したんだっけ?』

『まさし君?誰だそれ?』

父は覚えてないらしい

まぁ何年も前の話
実際に遊んでいた私でさえ忘れていたのだ
父が覚えてないのも無理はない

数日後、私はつとむ君にその話をした

つとむ君は首をかしげ
『そんな奴いたっけ?』

私は思い出せる限り
まさし君との思い出をつとむ君に話して聞かせた

私の家で遊んだ話
おばさんの家で遊んだ話

『いや、俺らいつも二人で遊んでたぞ?』

そんなはずはない
私はまさし君の顔も声もはっきりと記憶している

いつもリンゴのアップリケのついた服を着ていた
鮮明に覚えている

確かにまさし君はいた
何故誰も覚えてないのだろう

それ以来
まさし君のことが忘れられず
何度も記憶を辿ってみた

やっぱりまさし君はいる
そう確信した私は
もう一度アルバムを見返した

『あ!』
どこかの遊園地で撮ったであろう写真を見て
私は驚愕した

そこに写っていたのは
リンゴのアップリケがついた服を着た子供…

私である

まさし君がいつも着ていたと思っていた服は
私の服だった…

ではまさし君は存在しないのか…

いや、そんなはずはない

アルバムの中の一枚
雪の中で遊ぶ子供の写真…

私と
つとむ君と
リンゴのアップリケのついた服を着たまさし君

三人が確かに写っている

その写真を見せ
つとむ君や父
おばさんにも聞いてみた

『こんな子は知らん』

私だけが覚えているまさし君
確かに写真に写っているまさし君

彼は一体…
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