眠れぬ夜に
コンコン
運転席側の窓ガラスをノックする音で私は目覚めた

そこには叔母がいた

体を起こし
窓を開けると

『ちょっとおいで』
叔母がそう言った

車を降り
叔母の後に続いた

さっきのは夢だったのかな?
そんな事を考えながら
叔母に促されるまま
お堂のような離れに入った

中は立派な装飾が施され
なるほどお寺だと思えた

奥には先程の中年女性が袈裟を纏い座っていた

『あんたさっきは危なかったね』

『え?』
一瞬、意味がわからなかった

『目、合わせてたら連れていかれてたよ』

あぁ…
理解できた

先程の軍服の男はやはり夢ではなかったんだ

なるほど
彼女は本物の霊能者なのだろう

『お兄さんの背中にね、一族の長みたいな凄く強い守護霊がいらっしゃるの』

『はぁ…』

『お兄さんが入ってきた瞬間にわかるくらい強いの、その方がね、守ってくれたんだろうね』

ニコニコしながら話す女性

彼女の話だと
私に金縛りをかけたのは守護霊らしい

軍服の男と目を合わせないように

『あそこの滝ね、けっこう集まってくるからさ、たまに危ないのも来ちゃうのよ』

ケラケラと笑いながら
サラリと恐ろしい事を言う女性

『でも凄いねぇ、そんなに強い守護霊めったに見ないよ、私びっくりしたもん』

自覚がないのでピンとこないが
彼女の言葉には妙な説得力があった

帰り際

『またおいでね』

私は軽く会釈しながら
二度と来たくねぇよ
と心の中で呟いた
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