眠れぬ夜に
当時の私の自宅は
アリラン峠
と呼ばれる土地にあった

かつて炭鉱で栄えた町であり
労働者として大勢の朝鮮人が徴用されていた

労働環境は劣悪で
逃げ出す者も少なくなかった

そこで、朝鮮人を一括監理するために
小さな峠の集落に閉じ込めた

四方を柵で囲い
峠の出入り口には門が設けられた

頂上には見せしめのための処刑場もあったそうだ

図書館に資料が残っていたので
処刑場は事実なのであろう

少し地面を掘れば人骨が出てくる
そんな噂すらあった

とは言えなんせ戦前の話
私達の世代になると
そんな過去はほとんど知らない

噂で聞いた
その程度だ

逆に言えば
噂であるが故に尾ひれも付けやすく
私はある事無い事並べ立て
番長を怖がらせようとしていた
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