Grab
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拳と何かがぶつかる音
それの痛みに漏れ出る呻き声
誰かがその場に倒れ込む音
喧騒が一層大きくなる
「……テメェ…覚えてろよ…っ」
「死ね」
長い足を転がっている男の腹部へ直撃させた。
男はそのまま気絶した。
家出したその日、改めて人が怖いと思った。
何より、その男を何も写ってない双眸で見下ろす漆黒の髪の彼を怖いと思った。
ここから見ていることはバレていないと思ってた。
なのに、彼は私を睨みつける。
バレてた…ーーー
「…………」
「…………」
私と彼はそのまま見つめ合ってた。
彼が怖くて、呼吸しかその場ではできなかった。