僕と三課と冷徹な天使

完成

僕は一心不乱に仕事をした。

色々考えるのは、
この仕事が終わってからにしよう。

そう決めた。

考えたって仕方がないんだから。

とにかく、今は
この仕事を週末までに終わらせたい。

誰のためでもなく・・・

と思うが、
コオさんの笑顔が頭に浮かぶ。

いやいや、
と頭を振ってパソコンの
ディスプレイを睨みつける。

すると、
目の上に何かが触れた。

「灰田君、がんばりすぎー」

コオさんが笑いながら
僕の眉間のしわを指でのばしていた。

肌に触れる指の温かさにびっくりする。

何が起こったのかわからず、
ただ顔が熱くなった。

「ちゃんと休憩してきなさい。
 休憩中は仕事のこと考えちゃだめだよ」

とコオさんは優しく笑いながら言った。

休憩フロアでコーヒーを飲みながら、
僕は眉間をなでていた。

仕事以外のことを考えるのは
止めようと思っていたのに、

逆に仕事のことなんて
考えられなくなってしまった。

・・・コオさんの指の温度。

優しい笑顔。

・・・僕の心を乱すのはやめてほしい。

でもやめないでほしい。

なんだかなあと僕は思う。

はぁ・・・と息をついて窓を見ると、
真っ青な空が広がっていた。

澄んだ空をぼーっと眺める。

・・・よし、がんばろう。
とだけ思って僕は三課に戻った。


データが完成したのは
終業時間を2時間過ぎたころだった。

コオさんは隣にいたので

「コオさん、終わりました。」

とすぐ声をかけた。

「了解。」

と言って、コオさんは
共有フォルダにあるデータを確認し始める。

「・・・オッケー。完璧です」

と満面の笑みで僕を見た。

「やるじゃん!灰田~!」

と言ってコオさんは
僕の肩をバンバン叩き始めた。

少し痛かったけど、コオさんが
あまりにも嬉しそうなので
へらへら笑ってしまう僕だった。
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