僕と三課と冷徹な天使

幸せランチ

僕の楽しみは、
コオさんとのランチタイムだ。

コオさんは毎日食堂に誘ってくれる。

女の子に話しかけられること自体が奇跡なのに、
ごはんに誘われるというミラクルが起これば
断るわけにはいかない。

僕の人生でこんな奇跡が起こるのは
今だけかもしれないのだ。

緊張している場合ではない。

今日もコオさんと食堂に向かう。

いつもは唐揚げ定食ゲットのために
足早なコオさんがゆっくり歩いている。

「今日は急がないんですか?」

と僕は聞く。

「うん。今日はカツ丼を食べようと思って」

コオさんは意志の強そうな目で
まっすぐに僕を見て答える。

コオさんは本当にかっこいい。

僕は、昼ごはんをカツ丼と決め、
それを自信満々に言える女の子を
他に知らない。
(そもそも女の子の知り合いがいないのだが)

余裕でカツ丼をゲットしたコオさんは
今日も嬉しそうに食べ始める。

仕事中ははっきり言って「鬼」だが
食事中は、本当に嬉しそうに
幸せそうに食べる。

そんなコオさんを見られるこの時間が
僕は大好きだ。

その日、僕らは暖かい日差しが入る
窓際の席に座った。

コオさんは食後のコーヒーを飲みながら
頬杖をついて窓の外を見ていた。

食べるのが遅い僕は
急がなければ、と一生懸命食べる。

ふとコオさんを見ると、
目がほとんど開いていない。

あまり見ないように見ていると
コオさんは目をつぶったまま動かなかった。

どうやら寝てしまったらしい。

僕は食後のお茶をすすりながら
ここぞとばかりに

コオさんの寝顔をじっと見る。

長いまつげ。

綺麗な白い肌。

やわらかそうな唇。

心臓があまりにも激しく動いてきたので、
あわてて目をそらす。

でも我慢できずにまたじっと見る。

そんな幸せな繰り返しを
コオさんが寝ている間に
僕はしていた。

このまま時が止まればいいのにと思いながら。

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