僕と三課と冷徹な天使
森本
食堂でコオさんとご飯を食べた後
屋上で携帯をいじっていると、
森本がやってきた。
あの事件以来、
森本はよく僕に話しかける。
反田部長に何を言われたのだろうか・・・
あまり気にしないでいいと思うよ、
と言ったのだが、
「灰田君と話すと、
何だか癒される感じがする」
と、男に言われても
ちょっと微妙なことを言って
相変わらず話しかけてくれる。
研修中はノリが軽すぎて
ついていけないと思っていたが、
ちゃんと話してみると普通の男で
配属後の悩みや不安を話し始めると
お互い同じ思いをしている
ということがわかった。
「営業だから当たり前なんだけどさ、
毎日頭下げてばかりで、嫌になるよ」
と言う森本に、
「僕も毎日コオさんに謝ってばかりいる」
と慰めるつもりで言った。
「・・・でもさ、コオさん、かわいいよね」
森本がニコニコしながら言う。
本当に素直なやつなんだと思う。
「うん・・・でも怖いよ。
本当に厳しいから」
何だか言っていて少し寒気がした。
「いや、でもさ、美人じゃん。
いつも綺麗な人と一緒にいるって
うらやましいよ。
営業なんか体育会系のむさい男ばっかり」
僕は森本に同情した。
確かにコオさんは美人だ。
怒っていても、機嫌が悪くても、
眠そうでも、どの顔も綺麗で、
すぐに僕は見とれてしまいそうになる。
それに、コーヒーが美味しいとか
唐揚げ定食ゲットできたとか
そういう時に見せる笑顔もたまらない。
僕は森本に何も言ってあげられなかった。
「まあ、でも美人の先輩がいるから
総務三課に行けって言われても
究極の選択だけどな」
森本は言い切った。
何だかひどいことを言われた気がする・・・
いい奴なんだけど、あまり考えずに話すから
僕は時々傷つく。
そしてまた森本は突拍子もないことを言った。
「コオさんて、彼氏いるのかな?」
僕は言葉に詰まった。
「さ、さあ・・・」
「いるに決まってるか。
あんなに美人なんだもんな」
森本は僕の動揺には全く気づいていない様子で
断言した。
「そうだよね。いるよね・・・」
そうだよね、いるに決まっているよね。
心の中で自分に言い聞かすように繰り返す。
・・・何だか胸がチクチクする。
「ああいう人はどんな男と付き合うんだろうなあ。
じゃじゃ馬を乗りこなす年上の男か。
実は年下好きで彼の前ではデレデレとか。
ホストっぽい男もありかな」
森本のデリカシーの無さに嫌気がさしてきた。
「・・・人の先輩に対して勝手なことを言うなよ」
僕がキレたのはいつ以来だろう。
怒ることは大嫌いだ。
大体自分も人も傷つける。
でも言わずにはいられなかった。
胸のチクチクが僕の思考力を鈍らせたのかもしれない。
「あ・・・悪い。調子に乗りすぎた。
じゃ、そろそろ戻るわ」
と言って森本は戻っていった。
怒ってしまった後味の悪さと
胸のチクチクと僕は
ぽつんと取り残されたようだった。
屋上で携帯をいじっていると、
森本がやってきた。
あの事件以来、
森本はよく僕に話しかける。
反田部長に何を言われたのだろうか・・・
あまり気にしないでいいと思うよ、
と言ったのだが、
「灰田君と話すと、
何だか癒される感じがする」
と、男に言われても
ちょっと微妙なことを言って
相変わらず話しかけてくれる。
研修中はノリが軽すぎて
ついていけないと思っていたが、
ちゃんと話してみると普通の男で
配属後の悩みや不安を話し始めると
お互い同じ思いをしている
ということがわかった。
「営業だから当たり前なんだけどさ、
毎日頭下げてばかりで、嫌になるよ」
と言う森本に、
「僕も毎日コオさんに謝ってばかりいる」
と慰めるつもりで言った。
「・・・でもさ、コオさん、かわいいよね」
森本がニコニコしながら言う。
本当に素直なやつなんだと思う。
「うん・・・でも怖いよ。
本当に厳しいから」
何だか言っていて少し寒気がした。
「いや、でもさ、美人じゃん。
いつも綺麗な人と一緒にいるって
うらやましいよ。
営業なんか体育会系のむさい男ばっかり」
僕は森本に同情した。
確かにコオさんは美人だ。
怒っていても、機嫌が悪くても、
眠そうでも、どの顔も綺麗で、
すぐに僕は見とれてしまいそうになる。
それに、コーヒーが美味しいとか
唐揚げ定食ゲットできたとか
そういう時に見せる笑顔もたまらない。
僕は森本に何も言ってあげられなかった。
「まあ、でも美人の先輩がいるから
総務三課に行けって言われても
究極の選択だけどな」
森本は言い切った。
何だかひどいことを言われた気がする・・・
いい奴なんだけど、あまり考えずに話すから
僕は時々傷つく。
そしてまた森本は突拍子もないことを言った。
「コオさんて、彼氏いるのかな?」
僕は言葉に詰まった。
「さ、さあ・・・」
「いるに決まってるか。
あんなに美人なんだもんな」
森本は僕の動揺には全く気づいていない様子で
断言した。
「そうだよね。いるよね・・・」
そうだよね、いるに決まっているよね。
心の中で自分に言い聞かすように繰り返す。
・・・何だか胸がチクチクする。
「ああいう人はどんな男と付き合うんだろうなあ。
じゃじゃ馬を乗りこなす年上の男か。
実は年下好きで彼の前ではデレデレとか。
ホストっぽい男もありかな」
森本のデリカシーの無さに嫌気がさしてきた。
「・・・人の先輩に対して勝手なことを言うなよ」
僕がキレたのはいつ以来だろう。
怒ることは大嫌いだ。
大体自分も人も傷つける。
でも言わずにはいられなかった。
胸のチクチクが僕の思考力を鈍らせたのかもしれない。
「あ・・・悪い。調子に乗りすぎた。
じゃ、そろそろ戻るわ」
と言って森本は戻っていった。
怒ってしまった後味の悪さと
胸のチクチクと僕は
ぽつんと取り残されたようだった。