僕と三課と冷徹な天使
キューピッド
そのあとの僕は暗かった。
考えてみると、
僕はコオさんの私生活を何も知らない。
毎日一緒にごはんを食べているのに。
恋人がいるのかとか、
休日は何をしているのかとか、
普通の男だったら
うまく聞き出すんだろうなあ。
携帯番号とメアドは知っているけど
何かあったら連絡するように、と
コオさんから教えてくれたものだし。
近くに感じてきたコオさんが
また遠くに行ってしまったような気がする。
はあ、と心の中でため息をつきながら
午後の仕事を始めると、
吉田さんが
「ただいまー」
と外食から帰ってきた。
「よっしー、朝の遅刻は目をつぶるからさ、
せめて昼は時間通りに帰ってきて」
コオさんが小言を言う。
「まあまあ、そう怒るな。
ほれ、お土産。
bumpのフリーペーパー
もらってきたぞ」
吉田さんが賄賂を渡すと
コオさんの顔が輝いた。
「ありがとう~。
へえ~11月にドームでライブかあ・・・」
コオさんが仕事中に雑誌を見るなんて珍しい。
思わず僕は耳を大きくする。
「毎日残業してないで
たまにはライブにでも行」
「誰のせいで残業続きだと思ってんだよ」
吉田さんの言葉をさえぎるように
コオさんが言う。
「あー、でも行きたいなあ~・・・」
コオさんに怒られて
一瞬しゅんとした吉田さんが
すぐ復活して
「お前、どうせ一緒に行くやついないんだろ。
オトコもできないんだろうし。
俺が一緒に行ってやるぞ」
と言った。
え?
オトコいない?
心の中でガッツポーズを取る僕。
もちろん、そんな僕に気づくはずもなく
コオさんは
「よっしーと行くのもなあ・・・。
すぐ他の女の子ナンパするから~」
と吉田さんに言った。
・・・ちょっとこれはチャンスかもしれない。
ビーチフラッグのように
僕は神様の前髪を掴みにかかった。
「僕もbump好きです」
二人の話に割ってはいる。
心臓はバクバクだった。
これ以上ないくらい。
「じゃ、一緒にライブ行こうよ。
11月ってすごい先だけど」
とコオさんは笑った。
「はい」
僕は人目もはばからず、
キラキラした笑顔で答えた。
それを見ていた吉田さんは
ふっと笑って
「・・・なんだよ、お前ら。
俺はとんだピエロだな」
右手を振りながら自分のデスクへ戻る。
僕はその後姿に心の中で
敬礼をして見送った。
考えてみると、
僕はコオさんの私生活を何も知らない。
毎日一緒にごはんを食べているのに。
恋人がいるのかとか、
休日は何をしているのかとか、
普通の男だったら
うまく聞き出すんだろうなあ。
携帯番号とメアドは知っているけど
何かあったら連絡するように、と
コオさんから教えてくれたものだし。
近くに感じてきたコオさんが
また遠くに行ってしまったような気がする。
はあ、と心の中でため息をつきながら
午後の仕事を始めると、
吉田さんが
「ただいまー」
と外食から帰ってきた。
「よっしー、朝の遅刻は目をつぶるからさ、
せめて昼は時間通りに帰ってきて」
コオさんが小言を言う。
「まあまあ、そう怒るな。
ほれ、お土産。
bumpのフリーペーパー
もらってきたぞ」
吉田さんが賄賂を渡すと
コオさんの顔が輝いた。
「ありがとう~。
へえ~11月にドームでライブかあ・・・」
コオさんが仕事中に雑誌を見るなんて珍しい。
思わず僕は耳を大きくする。
「毎日残業してないで
たまにはライブにでも行」
「誰のせいで残業続きだと思ってんだよ」
吉田さんの言葉をさえぎるように
コオさんが言う。
「あー、でも行きたいなあ~・・・」
コオさんに怒られて
一瞬しゅんとした吉田さんが
すぐ復活して
「お前、どうせ一緒に行くやついないんだろ。
オトコもできないんだろうし。
俺が一緒に行ってやるぞ」
と言った。
え?
オトコいない?
心の中でガッツポーズを取る僕。
もちろん、そんな僕に気づくはずもなく
コオさんは
「よっしーと行くのもなあ・・・。
すぐ他の女の子ナンパするから~」
と吉田さんに言った。
・・・ちょっとこれはチャンスかもしれない。
ビーチフラッグのように
僕は神様の前髪を掴みにかかった。
「僕もbump好きです」
二人の話に割ってはいる。
心臓はバクバクだった。
これ以上ないくらい。
「じゃ、一緒にライブ行こうよ。
11月ってすごい先だけど」
とコオさんは笑った。
「はい」
僕は人目もはばからず、
キラキラした笑顔で答えた。
それを見ていた吉田さんは
ふっと笑って
「・・・なんだよ、お前ら。
俺はとんだピエロだな」
右手を振りながら自分のデスクへ戻る。
僕はその後姿に心の中で
敬礼をして見送った。