僕と三課と冷徹な天使

記憶

大学の時の夢をみた。

泥酔して置き去りにされる夢･･･

はっとして起き上がると、
僕は自分の部屋にいた。

確か、昨日は新歓だったよな･･･

記憶がない。

どうやって帰ったかわからない。

･･･そして頭が痛い。

痛い頭を抱えながら、考える。

日本酒をガンガン飲んでから、
記憶がない。

あれからどうしたんだろう･･･

何も思い出せない。

･･･ちゃんとカバン持って帰ったかな。

あった。財布もある。

隣で携帯のランプが光っている。

コオさんからメールだ･･･！

『鍵を預かっているので
　起きたらメールください』

鍵？

そういえば無い。

･･･じゃあどうやって家に入ったんだろう。

頭の痛みと気持ち悪さで考えられない。

もういいや、メールしよう。

１０分くらい経っただろうか、
コオさんから電話がかかってきた。

ベッドの上に正座をして電話を取る僕。

「もしもし、灰田？」

コオさんの声が聞こえる。

何だか耳がくすぐったい。

こんな状態なのに。

自分にあきれる。

「あ、はい。お疲れ様です。」

「体調大丈夫？泥酔してたけど」

コオさんが笑って言う。

「はい、頭が痛いです。
　･･･あの、何も覚えてないんですけど･･･」

「だろうねえ。灰田寝ちゃったから」

「え、じゃあ、どうやって帰ったんでしょうか」

「タクシーで、私と帰ったよ。
　重かったよ～灰田。
　運転手さんにも手伝ってもらっちゃった。」

驚いて何も言えなかった。

固まっている僕に気付いたのか、コオさんは

「大丈夫だよ。チップ渡しておいたから」

いや、そんな心配はしてないんです。

と思ったが

「あ･･･はい、ありがとうございます」

と答えておく。

はっと気づく。

じゃあ、コオさんこの家に入ったの？

「灰田、全然起きないから、
　私が鍵を閉めて帰ったんだよ。
　それで、鍵が私のところにあるの」

メールの意味がやっと分かった。

「今から返しに行ったほうがいいかな？
　合鍵ある？」

え？

合鍵は無い。

大家さんにもらった鍵を大事に使ってて
特に不便はなかった。

「合鍵は無いです･･･」

「じゃ、返しに行くね。
　30分くらいで着くと思う」

ええ？

焦って答える。

「いや、あの、準備が･･･
　ちょっと待ってください」

「別にいつでもいいけど、
　昨日、部屋には入ってるんだよ～
　綺麗な部屋だったから平気でしょ」

そうか･･･

コオさんが僕を部屋に入れてくれたんだもんな。

全部見られてるんだ･･･

僕はこの痛々しい部屋をみまわした。

アニメのフィギュアにポスター･･･

やっぱり抱き枕も見たかなあ･･･

「まあ、玄関先でいいけどね。
　鍵渡すだけだから。じゃああとでね」

と言ってコオさんは電話を切ってしまった。