僕と三課と冷徹な天使

元彼

元彼登場

ある日、部長が
僕の知らない男の人を連れて
三課にやってきた。

背が高くて、男前で、
堂々としていて
男の僕が見ても、かっこいい･･･と
見惚れるような人だった。

いつもは誰が来ても
全く気にしないみんなが
その人には挨拶をした。

みんな知っている人なんだ･･･
誰なんだろう？

ふと、コオさんを見ると
戸惑っているような感じがする。

「コオ。
　坂崎が戻ってきたぞ」

部長は言った。

コオさんは立ち上がって

「お疲れ様です」

と頭を下げた。

「また広報に戻るから、よろしくな」

と部長が言うと、続いて坂崎さんは

「みんな変わらないね。
　元気そうでよかった。
　コオちゃん、またよろしくね」

と笑顔で言った。

甘いマスク、とはこの顔だ、と思った。

コオさんはちょっと伏し目がちに
坂崎さんを見て

「はい。よろしくお願いします」

と言った。

何だかおとなしすぎる
変な感じのコオさんだった。


部長と坂崎さんが出て行った後、
じゅんさんが僕に

「コオさんの元彼なんだよ」

と小声でささやいた。

え？

じゅんさんの顔を見て
僕は固まってしまった。

あのかっこいい人が･･･？

コオさんの戸惑った顔の意味がわかった。

そして二人の間に流れる
微妙な空気の意味も。

･･･どきどきしてきた。

全然嬉しくないどきどき。

何だろう、これ。

･･･ああ、嫉妬だ。

部長に対するヤキモチみたいに
可愛いもんじゃない。

ブラックホールみたいな
闇に吸い込まれていく感じ･･･

どんな顔をしていいかわからない。

コオさんのほうを見られない。

･･･うわあ、これ、だめだ。

「ちょっと休憩してきます」

搾り出すように言って
僕は休憩フロアに逃げ出した。