僕と三課と冷徹な天使

注目


「灰田、ごはん行こう」

こんな日でも
コオさんはランチに誘ってくれる。

何だかうれしいような、
逃げたいような微妙な気分。

でも僕にとってコオさんの誘いは絶対だ。

「はい」

と言ってついていく。

今日も変わらず、美味しそうに
唐揚げ定食を食べる。

コオさんは、僕の心の中に
全然気づかないんだろうか。

うれしいような、
さみしいような変な気持ち。

食が進まないなあ、と思っていると
まわりの人と目が合うことに気づいた。

久しぶりのこの感じ。

もしかして、注目されている?

何だか落ち着かない・・・

すると部長がやってきた。

今日は何となくほっとする僕。

「お疲れー。・・・みんな噂好きだなー」

と部長が言う。

噂?

「もしかしてと思っていましたが、
 正直、ここまで注目されるとは・・・
 みんなヒマなんですかねえ」

コオさんが無表情に答える。

何のことだろう?

・・・あ、坂崎さんとのことか。

自分で気づけて
ちょっと誇らしげな気持ちになる。

いやいや、そんな場合じゃない。

なんて思っていると

「ごちそうさまー。お先でーす」

と言って、コオさんは行ってしまった。

えー・・・いつもだったら
食後のコーヒータイムなのに・・・

二人きりは嫌だったのに、
いなくなるとさみしい。

俺ってわがままだなあ。

心の中でため息をつき、食事を進める。

「美男美女だから注目されて、
 あることないこと言われて・・・」

部長がつぶやくように話し始める。

「あいつは平気な顔しているけど、
 実際どうなんだろうなあ。
 昔から限界まで何も言わないから」

そうか、部長は
三課の課長だったんだよなあ。

昔のコオさんを知っているんだ。

・・・聞きたいけど、聞きたくない・・・
僕の中のヤキモチがふくらむ。

お茶を飲みながら葛藤していると

「じゃ、先行くわ」

と言って、部長は
立ち上がって行ってしまった。
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