僕と三課と冷徹な天使

屋上に行くと、森本が飛んできた。

「ねえ、コオさんの元彼見た?」

来なければよかった・・・

考え無しの自分を責める。

「見たよ。
 これからよく三課にも来るって」

うんざりした顔で答える僕。

「めっちゃいい男だよね!
 本当、ベストカップルって感じだよなあ~」

呆れた気持ちを通り越して感心する。

森本って本当に鈍感だよなあ。

人のことは言えないけれど。

「でもさ、何で戻ってきたんだろう。」

「ああ、それは創立20周年の・・・」

僕の話を聞かずに森本が言う。

「もしかして、
 コオさんと結婚するのかな!?」

思わずすかさず

「はあ?何言ってんの?」

と言ってしまう僕。

こういうケンカを売るような言葉を
言いたくなったら、いったん自分の中で
留めるようにしているのだが、
言ってしまった。

「・・・そんなわけないじゃん。
 別れてるんだよ」

おさえめに言う僕。

でも顔はむっとしてしまう。

「でもさ、転勤がきっかけで別れたんでしょ。
 戻ってきたってことは、
 また付き合うだろうし、
 そこまでして一緒にいたいってことは
 結婚しか無いじゃん!」

なぜか嬉しそうに話す森本。

僕の表情と声色で何か気づかないのだろうか・・・

もう友達やめようかな。

「みんな結婚するに違いないって噂してるよ。
 そのうち三課で報告するんじゃないの?」

・・・ああ、それで食堂にいるとき
注目されていたんだ。

噂するくらいなら
コオさんに直接聞けばいいのに。

そんなわけないから。

そんなわけないよな。

そんなわけあるはずがない。

でも、僕だって直接聞いたわけじゃない。

ちょっと信じかけてしまう僕がいる。

「まあ・・・灰田は残念かもしれないけど
 やっぱり綺麗な人はいい男に取られるんだよ」

勝手に僕を落ち込ませて、
そしてなぐさめる男、森本。

彼しか友達がいない自分を
責めずにはいられなかった。
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