僕と三課と冷徹な天使

外ランチ

「今日は外に食べに行こうかなあ」

コオさんがパソコンを消しながら言った。

注目されてしまうことを
気にしているのだろうか。

それとも僕と行くのが嫌なのかな?

持ち前のネガティブが顔を出す。

いやいや何も悪いことはしてないはず。

思いきって

「じゃ、僕も行きます。」

と宣言をしてみる。

「そう?じゃあ、何食べようか~」

僕の宣言なんて気にも留めない様子で
コオさんが言う。

よし、僕が嫌なわけじゃないな。

「そうですね・・・」

僕はこの会社に入社してから、
外でご飯を食べたのは数回しかない。

悩んでも何も出てこない気がするが
うーん、と考えてみる。

「もういいか。食堂で」

とコオさんは早々に考えるのを諦めた。

「はい。食堂にしましょう」

やっぱり食堂が好きだなと思っていた
僕も同意した。


食堂に着くなり、
何だかひそひそと言われている感じがする。

やっぱりなあ。

僕はコオさんに気づかれないように
はあ、心の中でため息をつく。

出足が遅れたので、唐揚げはゲットできず、
コオさんはカツ丼を食べている。

相変わらず注目を集める僕ら。

コオさんは気にしていないように見えて
気にしているのかもしれない。

よし、楽しい会話だ。

「コオさんは唐揚げとかカツ丼とか
 毎日食べてますけど、太らないですよね~」

コオさんの目が一瞬冷たくなった。

あれ?楽しくない話題だったかな・・・?

「イヤミ言ってんの?
 最近お腹がたるんできたんだよね・・・」

コオさんの目が怖い。

「あの・・・すみません」

やってしまったようだ。

言わなきゃよかった・・・

やっぱり僕には楽しい会話なんて
無理なんだ・・・

一気に落ち込む。

コオさんはふふっと笑って

「冗談だよ、冗談」

と言った。

騙されたことに気付いた僕は

「もう、マジでびびりましたよ。
 もう~」

とちょっと涙目で言った。

・・・勘弁してほしい。
本当にドッキリした。

「でも本当に気をつけないといけないんだよね~
 灰田みたいにヘルシーなのも食べなきゃ」

とコオさんは僕の
焼き魚定食を見て言った。

「あ、僕は油ものを食べ過ぎると
 おなか壊しちゃうんで」

「・・・おなか壊しちゃうんだ」

とコオさんが笑いながら繰り返した。

なぜか僕を見ながらまだ笑っている。

変なこと言ったかなあ・・・

まあいいや、コオさんが楽しそうだから。

ちょっと泣きそうになったけど、
楽しい会話のランチタイム、とりあえず成功かな。

僕はまた心の中でほくそ笑むのだった。
< 60 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop