僕と三課と冷徹な天使

聞こう

森本と話していて
コオさんが何故坂崎さんと別れたのか
とても気になってきた。

色々あるんだろうとは思う。

でもその色々が全然わからない。

想像もつかない。

今日も仕事ができないと
さすがにまずい。

もう聞いてみちゃおう、と思った。

運よく、コオさんが会議に行ったので、
あっこさんにお伺いをたてる。

「あの、聞きたいことがあるので
 ちょっとコーヒーでも飲みにいきませんか・・・」

あっこさんとはいえ、女の子だ。

何だか緊張する。

「あら、めずらしい。いいよ」

と、なんでもないことのように
あっこさんは言って立ち上がった。


休憩フロアで僕がコーヒーを渡すと
あっこさんは

「コオさんのことでしょ」

と言った。

コオさんといい、あっこさんといい
読心術の使い手ばかりだ。

っていうか、
女の子ってみんなそうなのかな?

全然わからないけど。

「はい。
 ・・・坂崎さんと別れた理由が知りたくて」

僕は素直に答えた。

「ふーん・・・」

ちょっと冷めた目であっこさんは僕を見る。

え?だめだったかな?

やっぱり姑息な手段だった・・・?

内心ドキドキだった。

「まあいいわ。
 一年前、私たちが配属される前に
 宮崎部長が三課から離れたのは知ってる?」

あっこさんは話し始めてくれた。

「はい」

「それでコオさんは急にすごく忙しくなって
 身も心もボロボロだったんだって」

ボロボロかあ・・・
一年前のコオさんを思って心が痛くなった。

「そこに現れたのが坂崎さんで、
 優しくて包容力のある彼がコオさんを支えたの。
 当時のコオさんは彼無しでは
 生きていけないって感じだったんだって」
 
そうなんだ~・・・
ちょっと嫌な気分になってきた。
ああ、ヤキモチだ。

「でも仕事に慣れて、復活したコオさんは
 彼よりも仕事になっちゃったのね。
 コオさんて責任感が強いでしょ。
 仕事を最優先にしちゃうのよね」

うん。
コオさんってそうですよね。

心の中で合いの手を入れる。

「でも坂崎さんは女の人には
 家庭に入ってほしいタイプで、
 コオさんにそれを求めてしまったのよ」

あー。
それ無理です。

コオさんの汚部屋を思い出す。

「で、コオさんが疲れて、別れちゃったの」

そうなんだ・・・
色々あったんだなあ。

僕が知らないコオさんの歴史に
やっぱりヤキモチを焼いて
モヤモヤしてしまう。

でもコオさんと坂崎さんの合わない感じが
わかってちょっと安心した。

「ありがとうございました。
 聞いてよかったです。」

「コーヒー一杯で話すことじゃなかったなあ。
 今度私にも角煮作って
 会社に持ってきて。
 あ、チャーシューも食べたいなあ」

と言ってあっこさんは
にやっと笑った。

え、何故それを知っているのだろう。

もしかして、他の色々なことも
知っているのだろうか、この人は・・・

内心焦りながら

「・・・はい」

と答えるしかない僕だった。
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