僕と三課と冷徹な天使
離れる

打合せって

今日も僕とコオさんは
そろって残業をする。

そして、だいたい僕が
先に仕事を切り上げて
コオさんが一人で残る。

その後何時までいるのかは、
よく知らない。

残業しすぎて、ご飯も食べずに
帰ってすぐ寝たりするらしい。

だから毎日唐揚げを食べても
太らないんだなあ、
なんて感心していたけど、
最近は少し心配になってきた。

もうちょっと残業
少なくできないのかなあ。

確かにコオさんの仕事は
僕より多いけど、前に比べれば
ずいぶん減ったと思うし・・・

そんなことを考えていると

「ただいまー」

コオさんが部長との打合せから
帰ってきた。

終業時刻から二時間も経っている。

これからコオさんは
自分を仕事をしないといけない。

やっぱり心配だ。

なんとなく僕は聞いてみた。

「今日は何の打合せだったんですか?」

・・・ん?

ちょっとコオさんが固まっている。

「えーと・・・
 今日はみんなの進捗報告と・・・
 ・・・おもに雑談」

気まずそうに言うコオさん。

え?雑談?

今まで聞いたことが無かったから
知らなかった。

いや、そういえば僕が配属したてのころ
残業を終わってコオさんを呼びに行ったら
部長と雑談してた。

あの時も打合せだって言ってた・・・

「雑談だったんですか・・・」

「いや、でもね、雑談のようで、
 みんなの様子とかの報告になっているし、
 これからいい感じかもね、なんて話にもなるし
 まあ、打合せって言えば打合せなんだよ」

なんとなく説明くさいコオさん。

僕は、せっかくだから
言ってしまおう、と思った。

「でも、その雑談が無ければ、
 コオさんは一時間早く帰れませんか?」

なんとなく
コオさんが小さくなっている。

「毎日ちょっとでも早く帰れば
 帰りが遅くなりすぎて
 ご飯食べずに寝ちゃうことも
 なくなるんじゃないですか」

コオさんの目が細くなってきた。

もちろん口はへの字。

でも僕は言う。

「部長との雑談は大事かもしれないですけど
 コオさんの体も大事にしてください。
 じゃないと仕事の効率も悪くなります」

コオさんは怖いけど、
僕も成長しました。

言うときは言います。

ちょっとどきどきだけれども。

「そりゃそうなんだけど、
 じゃあどうすればいいの?
 部長と話してると
 雑談になっちゃうんだもん」

コオさんは怒らずに、
拗ねた顔で言った。

あのやろう、と僕は思った。

部長のせいじゃん!もう!

「・・・じゃ、僕が部長と打合せします」

いつも部長には負けられないと思っていた。

そんな気持ちが先走って言ってしまった。

やばいこと言っちゃったかもしれない・・・
と思ったがもう遅いようだ。

「・・・あ、なるほど。
その手があったか」

少し考えて納得するコオさん。

ああ、何か戻れない気がする。

「うん。じゃあ、お願い。
 灰田なら全然いける」

コオさんは何だか
ニヤニヤしている。

・・・絶対おもしろがっている。

さすがの僕も
言ってすぐには引けない。

黙ってひたすら後悔することしか
できなかった。
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