僕と三課と冷徹な天使
深刻
いつものランチタイム。
ちょっとコオさんは元気がない気がする。
どうしたんだろう。
僕は朝のことをすっかり忘れている。
「灰田さあ・・・」
何か言いかけたコオさんだが、
部長がやってきた。
あからさまに嫌な顔をするコオさん。
そんなことには気づかず、
僕は部長に聞きたい仕事があったので
聞いてしまう。
「お疲れ様です。
部長、営業部のデータは
来週中で大丈夫ですかね」
うどんに七味をかけながら
「うん。大丈夫。
急ぎじゃないって言ってたから」
部長が答える。
よかった。
納期が延びて安心する僕。
コオさんが何か言いかけたことを
すっかり忘れてしまっていた。
食堂を出て、
僕はいつものように屋上へ行く。
屋上では相変わらず森本と話すことが多い。
最近は噂話だけじゃなくて
僕の仕事の悩みや愚痴を
聞いてもらったりもしていた。
同じ立場で聞いてくれるので
同期はありがたい。
変なことも言うやつだけど、
森本と仲良くなれて良かった。
今日の森本は
めずらしく深刻な顔をしている。
コオさんといい、
今日は変な人が多いなあと思っていると
森本が言った。
「あのさあ・・・
・・・コオさん・・・
秘書課に行くって聞いてる?」
え?
何言ってるの?
寝耳に水、とはこのことだった。
いや、でも森本の言うことだから・・・
あ・・・!
秘書課の翠さんが
三課に来たことを思い出す。
その話のために来たのかな・・・
えー・・・そうなの?
本当に・・・?
「やっぱり知らないんだ。
灰田、思ったより明るい顔してたから」
さすがの森本も今日は
僕の顔色をよく見てくれる。
「いや、でも確実な話じゃないんだ。
コオさんと翠さんが仲良さそうに話してたって言う
先輩がいて、コオさん秘書向いてそうだねって
みんなで言ってたら
反田部長がものすごく怒ってさ。
もしかして図星なんじゃないかって・・・」
森本の話が耳に入ってこない。
翠さんとコオさんの姿が
目の前にちらつく。
コオさんが三課からいなくなる?
・・・うわー、どうしよう・・・
考えられない。
・・・俺、どうしよう?
全然わからない・・・
僕が混乱していると、突然
森本は強い力で僕の肩をつかんで
自分の正面に顔を向けた。
いつもと違う真剣なまなざし。
「灰田、大丈夫だ。
お前、最近仕事がんばってただろ。
自信を持て」
いつも僕の愚痴や
悩みを聞いてくれていた
森本の言葉には
不思議な説得力があった。
確かにがんばった。
がんばっている。
・・・でも。
「それに、コオさんとお前の関係は
こんなことじゃ崩れないだろ」
森本がさらに言う。
・・・そうなんだろうか。
一緒に帰ることはもちろん、
二度と会えない
遠い存在になるような気がした。
ありえる。
恐ろしい可能性に気付いてしまって
僕はこれ以上は考えるのを止めよう
と思った。
「・・・森本、ありがとうな」
励ましてもらえてうれしかった。
戸惑いは消えないが、
感謝だけは伝えて、僕は立ち上がった。
ちょっとコオさんは元気がない気がする。
どうしたんだろう。
僕は朝のことをすっかり忘れている。
「灰田さあ・・・」
何か言いかけたコオさんだが、
部長がやってきた。
あからさまに嫌な顔をするコオさん。
そんなことには気づかず、
僕は部長に聞きたい仕事があったので
聞いてしまう。
「お疲れ様です。
部長、営業部のデータは
来週中で大丈夫ですかね」
うどんに七味をかけながら
「うん。大丈夫。
急ぎじゃないって言ってたから」
部長が答える。
よかった。
納期が延びて安心する僕。
コオさんが何か言いかけたことを
すっかり忘れてしまっていた。
食堂を出て、
僕はいつものように屋上へ行く。
屋上では相変わらず森本と話すことが多い。
最近は噂話だけじゃなくて
僕の仕事の悩みや愚痴を
聞いてもらったりもしていた。
同じ立場で聞いてくれるので
同期はありがたい。
変なことも言うやつだけど、
森本と仲良くなれて良かった。
今日の森本は
めずらしく深刻な顔をしている。
コオさんといい、
今日は変な人が多いなあと思っていると
森本が言った。
「あのさあ・・・
・・・コオさん・・・
秘書課に行くって聞いてる?」
え?
何言ってるの?
寝耳に水、とはこのことだった。
いや、でも森本の言うことだから・・・
あ・・・!
秘書課の翠さんが
三課に来たことを思い出す。
その話のために来たのかな・・・
えー・・・そうなの?
本当に・・・?
「やっぱり知らないんだ。
灰田、思ったより明るい顔してたから」
さすがの森本も今日は
僕の顔色をよく見てくれる。
「いや、でも確実な話じゃないんだ。
コオさんと翠さんが仲良さそうに話してたって言う
先輩がいて、コオさん秘書向いてそうだねって
みんなで言ってたら
反田部長がものすごく怒ってさ。
もしかして図星なんじゃないかって・・・」
森本の話が耳に入ってこない。
翠さんとコオさんの姿が
目の前にちらつく。
コオさんが三課からいなくなる?
・・・うわー、どうしよう・・・
考えられない。
・・・俺、どうしよう?
全然わからない・・・
僕が混乱していると、突然
森本は強い力で僕の肩をつかんで
自分の正面に顔を向けた。
いつもと違う真剣なまなざし。
「灰田、大丈夫だ。
お前、最近仕事がんばってただろ。
自信を持て」
いつも僕の愚痴や
悩みを聞いてくれていた
森本の言葉には
不思議な説得力があった。
確かにがんばった。
がんばっている。
・・・でも。
「それに、コオさんとお前の関係は
こんなことじゃ崩れないだろ」
森本がさらに言う。
・・・そうなんだろうか。
一緒に帰ることはもちろん、
二度と会えない
遠い存在になるような気がした。
ありえる。
恐ろしい可能性に気付いてしまって
僕はこれ以上は考えるのを止めよう
と思った。
「・・・森本、ありがとうな」
励ましてもらえてうれしかった。
戸惑いは消えないが、
感謝だけは伝えて、僕は立ち上がった。