僕と三課と冷徹な天使

どうしよう

コオさんと休憩フロアに二人でいるのは
初めてかもしれないな、
なんて思っていた。

「秘書課の話、森本君に聞いたんでしょ」

コオさんが
いつもと変わらない声で言った。

「私も昨日言われたばかりなんだけどね・・・
 まさか営業が嗅ぎ付けるとはね。
 あいつら・・・」

ちらっと見ると
いつもの冷徹なコオさんの顔。

森本もおびえるはずだ。

そして、ぽつりと

「灰田には自分で話したかったなあ」

と言った。

そう言ってもらえて
救われた気がする。

でもコオさんが、秘書課に行くことを
認めている気がして、
また暗闇に落ちていく僕。

「秘書課は忙しいから嫌なんだけど、
 去年社長にはお世話になっててさ。
 無下には断れなくて」

コオさんはすごいなあ。

社長とも面識があるんだ。

僕なんか挨拶すら
する機会がないのに。

感情もなく、ただそう思う。

「秘書課も大変なんだよね。
 一人出産で辞めるらしくて。
 辞められて大変な気持ちはよくわかるから」

・・・やっぱり、コオさん、
もう秘書課に行くんだなあ。

秘書課のことばっかり言ってる・・・

「あーでも、やだなあ・・・」

ちょっと悲しそうな顔で
つぶやくコオさん。

・・・そうなんだ。

ここまで言っているから
もう秘書課に行くと
決めているのかと思った。

何で嫌なんだろう。

でも聞けない。

理由がわかってしまったら
解決してあげないといけなくなる。

そして秘書課に行ってしまう。

僕には送り出せない。

まだいてほしい。

仕事も精神的にもフォローしてほしい。

情けないけど。

「考えててもしかたないか。
 仕事戻ろう」

とコオさんが言う。

「はい」

と言って僕は
いつものようについていった。
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