僕と三課と冷徹な天使
やめよ
三課に戻るとコオさんはいなかった。
きっと部長の言うとおり
社長室に行っているのだろう。
僕はやっぱり仕事が手につかない。
まったく、せっかく育てた後輩がこれじゃ
コオさんも心配で秘書課に行けないよ。
本当にそうだな・・・
自分で思って自分で納得する。
仕方がないので、
簡単にできそうな雑用から
手をつけはじめる。
するとコオさんが帰ってきた。
「ただいまー。
・・・部長なんの話だった?」
「コオさんが秘書課に行く話でした」
僕は素直に答えた。
コオさんの顔色が曇る。
「部長が三課から離れるとき、
コオさんがどうだったかを
話してくれました。」
事実を答えることしかできなかった。
「・・・そっか。
時間取らせてごめんね」
申し訳なさそうにしながらも
ポケットからたくさんのチョコを取り出す。
「・・・それ、どうしたんですか?」
あまりの量にびっくりして僕は聞いてしまう。
しかも、この深刻な話の最中に。
「社長室のチョコ。
たくさん持ってきてやった」
鼻で笑いながらコオさんは言う。
思わず僕も笑ってしまう。
「高級な味で美味しいよ。あげる」
と言ってチョコをひとつ僕に渡して
コオさんはチョコを食べる。
僕は手のひらのチョコを見つめながら思う。
送り出さなきゃ、秘書課に。
笑顔で。
僕は大丈夫ですからって。
・・・言えない。
すると、コオさんはぽつりとつぶやいた。
「秘書課行くの、やっぱり断ろうかな。
三課楽しいもん。
何だかんだ言って、みんな大好きだし。」
ぼーっとした目で
チョコを食べながら言う。
直感的に思う。
悲しそうな顔の訳はこれだったんだ。
・・・そうですよね。
秘書課に行くのやめましょうよ、
と言いたい。
僕もコオさんがいなくなるの嫌です。
ずっと三課にいて
となりに座っていてください、
と言ってしまいたい。
でも・・・きっと
コオさんの本心じゃない。
義理堅いコオさんが
困っている秘書課を
見捨てるわけがない。
・・・僕が背中を押さなきゃ。
コオさんのためにも。
「いつでも三課に遊びに来てください。」
これが僕の言える精一杯の言葉だった。
「・・・灰田が良くても
松井課長が怒りそう。」
コオさんが淡々と答える。
「大丈夫です。怒りません」
「きっと私の席に松井課長が来るよ。
居場所なくなっちゃう。」
「コオさんの席は僕が作ります。」
「無理だよ、松井課長の嫌いな言葉、
無理、ムラ、無駄、だもん」
「僕が何とかします。」
「・・・」
僕の強い口調に、コオさんは
何も言い返せなくなったようだった。
「・・・僕、コオさんのこと、尊敬してます。
頭がよくて、仕事ができて、いつも厳しいけど、
実は優しくて、みんなのこと考えてて・・・」
しかも綺麗で、と
ちょっと心の中で思いながら
僕は言葉を続けた。
「コオさんは秘書課に行って、
社長を支えてください。
コオさんにしかできない仕事です。
僕はコオさんの大好きな三課を
精一杯守ります」
口ではかっこいいことを言っておきながら
僕はコオさんを見ることができなかった。
今、コオさんの顔を見たら
本当のことを
言ってしまいそうだった。
「・・・わかった。
今日は先に帰るね」
と言ってコオさんは
帰る支度をして、三課を出て行った。
きっと部長の言うとおり
社長室に行っているのだろう。
僕はやっぱり仕事が手につかない。
まったく、せっかく育てた後輩がこれじゃ
コオさんも心配で秘書課に行けないよ。
本当にそうだな・・・
自分で思って自分で納得する。
仕方がないので、
簡単にできそうな雑用から
手をつけはじめる。
するとコオさんが帰ってきた。
「ただいまー。
・・・部長なんの話だった?」
「コオさんが秘書課に行く話でした」
僕は素直に答えた。
コオさんの顔色が曇る。
「部長が三課から離れるとき、
コオさんがどうだったかを
話してくれました。」
事実を答えることしかできなかった。
「・・・そっか。
時間取らせてごめんね」
申し訳なさそうにしながらも
ポケットからたくさんのチョコを取り出す。
「・・・それ、どうしたんですか?」
あまりの量にびっくりして僕は聞いてしまう。
しかも、この深刻な話の最中に。
「社長室のチョコ。
たくさん持ってきてやった」
鼻で笑いながらコオさんは言う。
思わず僕も笑ってしまう。
「高級な味で美味しいよ。あげる」
と言ってチョコをひとつ僕に渡して
コオさんはチョコを食べる。
僕は手のひらのチョコを見つめながら思う。
送り出さなきゃ、秘書課に。
笑顔で。
僕は大丈夫ですからって。
・・・言えない。
すると、コオさんはぽつりとつぶやいた。
「秘書課行くの、やっぱり断ろうかな。
三課楽しいもん。
何だかんだ言って、みんな大好きだし。」
ぼーっとした目で
チョコを食べながら言う。
直感的に思う。
悲しそうな顔の訳はこれだったんだ。
・・・そうですよね。
秘書課に行くのやめましょうよ、
と言いたい。
僕もコオさんがいなくなるの嫌です。
ずっと三課にいて
となりに座っていてください、
と言ってしまいたい。
でも・・・きっと
コオさんの本心じゃない。
義理堅いコオさんが
困っている秘書課を
見捨てるわけがない。
・・・僕が背中を押さなきゃ。
コオさんのためにも。
「いつでも三課に遊びに来てください。」
これが僕の言える精一杯の言葉だった。
「・・・灰田が良くても
松井課長が怒りそう。」
コオさんが淡々と答える。
「大丈夫です。怒りません」
「きっと私の席に松井課長が来るよ。
居場所なくなっちゃう。」
「コオさんの席は僕が作ります。」
「無理だよ、松井課長の嫌いな言葉、
無理、ムラ、無駄、だもん」
「僕が何とかします。」
「・・・」
僕の強い口調に、コオさんは
何も言い返せなくなったようだった。
「・・・僕、コオさんのこと、尊敬してます。
頭がよくて、仕事ができて、いつも厳しいけど、
実は優しくて、みんなのこと考えてて・・・」
しかも綺麗で、と
ちょっと心の中で思いながら
僕は言葉を続けた。
「コオさんは秘書課に行って、
社長を支えてください。
コオさんにしかできない仕事です。
僕はコオさんの大好きな三課を
精一杯守ります」
口ではかっこいいことを言っておきながら
僕はコオさんを見ることができなかった。
今、コオさんの顔を見たら
本当のことを
言ってしまいそうだった。
「・・・わかった。
今日は先に帰るね」
と言ってコオさんは
帰る支度をして、三課を出て行った。