僕と三課と冷徹な天使
シチュー
僕が残業していると
コオさんが三課に戻ってきた。
「ただいまー・・・
ってもう違うのかー。違和感ー」
と言いながら笑って
コオさんの元の席に座った。
「ちょっと待ってくださいね。
もうすぐ終わります」
僕は言った。
いつもなら、
大丈夫だよ、無理しないで
なんて言ってくれるコオさんだが
「はやく帰ろう」
と言って
松井課長が置いていったペンを
机の上にころがした。
昼間と違って
何だかさみしそうだったので
僕は急いで仕事を片付けた。
僕が作ったシチューは我ながら絶品だった。
「ワイン買いますか?」
と駅前でコオさんに聞いたが
「今日は飲まない」
と言うので、シチューとパンとお茶を出して
僕はテーブルに座った。
「いただきまーす」
と嬉しそうに食べるコオさん。
帰りも元気がなかったから安心する僕。
でも
何から言えばいいか、わからない。
「・・・秘書課に行っても、
たまにはご飯食べに来てください」
「うん」
笑顔で答えるコオさん。
「コオさんの家にも、
またご飯を作りに行きます。」
「・・・うん」
「でも週末も忙しかったりするんですかね。
今日も全然三課に戻れなかったですもんね」
コオさんの返事がないが、
僕は何となくコオさんの顔を見られない。
「あ、部屋の掃除もやらないといけませんね。
忙しくなるから、きっとすぐ汚くなっちゃいます。」
こんな話をしたいんじゃないんだけど、
何だか止まらない僕。
「忙しくても、ちゃんと晩ご飯は食べてくださいね。
仕事の効率が・・・」
ふと、コオさんを見ると、
目に涙をためている。
「・・・すみません。なんか、僕・・・」
何が言いたいのか
よくわからない。
「・・・さみしい」
と言ってコオさんは
目から涙をポロポロと落とし始めた。
「離れたくないよー」
コオさんの涙は次々とあふれ出て
頬へと落ちていく。
・・・僕だってそうだ。
コオさんに言われて
やっと気づいた。
一番言わなきゃいけないことを
何も言っていない。
僕はコオさんのそばへ行き、
体を抱き寄せた。
心の中では大きい存在だれど
実際にはこんなに小さいコオさん。
僕の腕の中にすっぽりおさまって
涙を流して、肩を揺らしている。
どうしてこんな風になるまで
言えなかったんだろう。
いつだって言えたはずだ。
きっと、コオさんだって
この言葉を待っていたんだ。
「・・・僕もです。
さみしいです・・・
離れたくないです・・・」
コオさんは僕の体にしがみつく。
そして
僕の胸に顔をうずめる。
「そばにいて・・・」
泣きながら言うコオさん。
コオさんを抱きしめる力が強くなる。
「・・・大丈夫です。
何かあったら呼んでください。
すぐ行きます。
会社でも家でもどこでも。」
僕の頬にコオさんの髪が触れる。
髪から爪の先まで。
いつものかわいい笑顔から
抑えきれず
溢れ出てしまった涙まで。
コオさんのすべてが
心から愛おしい、と思う。
「コオさんのこと大好きなんです。
ずっとそばにいます。」
やっと言えた。
心の奥底にずっと眠らせていた言葉。
僕は、言いたいこと全部を
コオさんにやっと言うことができた。
泣きながらうなずくコオさん。
どうしたら涙が止まるのか
わからない僕は
ただひたすらコオさんを抱きしめた。
大事な何かをあたためるように。
ふと
コオさんの腕が僕から少し離れた。
胸に顔をうずめていたコオさんが
僕の顔を見る。
もう涙は流れていなかった。
潤んだ瞳を見つめ返す。
コオさんは僕の頭に腕をまわし、
自分の顔に僕の顔を近づけて、
キスをした。
心まで溶ける気がした。
コオさんはずっと僕の頭を離さず、
柔らかい唇と僕の唇は触れ続けた。
苦しくなって
思わず僕が離れると、
コオさんはまた僕の唇を自分の唇に
重ねるのだった。
何度も。
何度も繰り返した。
ふと、コオさんがつぶやく。
「帰りたくない。」
僕も帰したくない。
ずっと一緒にいたい・・・
でも・・・
「・・・でも明日から秘書課ですよね。」
我ながら変なところがしっかりしていると思う。
「もっと続きしたい。」
・・・続き、ですか。
うーん・・・。
そんなに簡単にはいかないんです・・・
・・・初めて、なんです。
この雰囲気でこれは言えない。
それくらいは僕にもわかる。
「えーっと・・・やっぱり明日もあるんで・・・
あの、コオさん移動したばかりですし、
社長も待ちに待ったでしょうから・・・」
直視できないけど
僕の腕の中で
きっとコオさんは拗ねている。
「あの、週末にゆっくり続きを・・・」
「絶対だよ。」
くいぎみにコオさんは言った。
「・・・はい。」
僕は今から
まず心の準備をしないといけない。
そして他にも色々と準備があるんだろう。
仕事よりも大切なミッションが与えられた。
コオさんが三課に戻ってきた。
「ただいまー・・・
ってもう違うのかー。違和感ー」
と言いながら笑って
コオさんの元の席に座った。
「ちょっと待ってくださいね。
もうすぐ終わります」
僕は言った。
いつもなら、
大丈夫だよ、無理しないで
なんて言ってくれるコオさんだが
「はやく帰ろう」
と言って
松井課長が置いていったペンを
机の上にころがした。
昼間と違って
何だかさみしそうだったので
僕は急いで仕事を片付けた。
僕が作ったシチューは我ながら絶品だった。
「ワイン買いますか?」
と駅前でコオさんに聞いたが
「今日は飲まない」
と言うので、シチューとパンとお茶を出して
僕はテーブルに座った。
「いただきまーす」
と嬉しそうに食べるコオさん。
帰りも元気がなかったから安心する僕。
でも
何から言えばいいか、わからない。
「・・・秘書課に行っても、
たまにはご飯食べに来てください」
「うん」
笑顔で答えるコオさん。
「コオさんの家にも、
またご飯を作りに行きます。」
「・・・うん」
「でも週末も忙しかったりするんですかね。
今日も全然三課に戻れなかったですもんね」
コオさんの返事がないが、
僕は何となくコオさんの顔を見られない。
「あ、部屋の掃除もやらないといけませんね。
忙しくなるから、きっとすぐ汚くなっちゃいます。」
こんな話をしたいんじゃないんだけど、
何だか止まらない僕。
「忙しくても、ちゃんと晩ご飯は食べてくださいね。
仕事の効率が・・・」
ふと、コオさんを見ると、
目に涙をためている。
「・・・すみません。なんか、僕・・・」
何が言いたいのか
よくわからない。
「・・・さみしい」
と言ってコオさんは
目から涙をポロポロと落とし始めた。
「離れたくないよー」
コオさんの涙は次々とあふれ出て
頬へと落ちていく。
・・・僕だってそうだ。
コオさんに言われて
やっと気づいた。
一番言わなきゃいけないことを
何も言っていない。
僕はコオさんのそばへ行き、
体を抱き寄せた。
心の中では大きい存在だれど
実際にはこんなに小さいコオさん。
僕の腕の中にすっぽりおさまって
涙を流して、肩を揺らしている。
どうしてこんな風になるまで
言えなかったんだろう。
いつだって言えたはずだ。
きっと、コオさんだって
この言葉を待っていたんだ。
「・・・僕もです。
さみしいです・・・
離れたくないです・・・」
コオさんは僕の体にしがみつく。
そして
僕の胸に顔をうずめる。
「そばにいて・・・」
泣きながら言うコオさん。
コオさんを抱きしめる力が強くなる。
「・・・大丈夫です。
何かあったら呼んでください。
すぐ行きます。
会社でも家でもどこでも。」
僕の頬にコオさんの髪が触れる。
髪から爪の先まで。
いつものかわいい笑顔から
抑えきれず
溢れ出てしまった涙まで。
コオさんのすべてが
心から愛おしい、と思う。
「コオさんのこと大好きなんです。
ずっとそばにいます。」
やっと言えた。
心の奥底にずっと眠らせていた言葉。
僕は、言いたいこと全部を
コオさんにやっと言うことができた。
泣きながらうなずくコオさん。
どうしたら涙が止まるのか
わからない僕は
ただひたすらコオさんを抱きしめた。
大事な何かをあたためるように。
ふと
コオさんの腕が僕から少し離れた。
胸に顔をうずめていたコオさんが
僕の顔を見る。
もう涙は流れていなかった。
潤んだ瞳を見つめ返す。
コオさんは僕の頭に腕をまわし、
自分の顔に僕の顔を近づけて、
キスをした。
心まで溶ける気がした。
コオさんはずっと僕の頭を離さず、
柔らかい唇と僕の唇は触れ続けた。
苦しくなって
思わず僕が離れると、
コオさんはまた僕の唇を自分の唇に
重ねるのだった。
何度も。
何度も繰り返した。
ふと、コオさんがつぶやく。
「帰りたくない。」
僕も帰したくない。
ずっと一緒にいたい・・・
でも・・・
「・・・でも明日から秘書課ですよね。」
我ながら変なところがしっかりしていると思う。
「もっと続きしたい。」
・・・続き、ですか。
うーん・・・。
そんなに簡単にはいかないんです・・・
・・・初めて、なんです。
この雰囲気でこれは言えない。
それくらいは僕にもわかる。
「えーっと・・・やっぱり明日もあるんで・・・
あの、コオさん移動したばかりですし、
社長も待ちに待ったでしょうから・・・」
直視できないけど
僕の腕の中で
きっとコオさんは拗ねている。
「あの、週末にゆっくり続きを・・・」
「絶対だよ。」
くいぎみにコオさんは言った。
「・・・はい。」
僕は今から
まず心の準備をしないといけない。
そして他にも色々と準備があるんだろう。
仕事よりも大切なミッションが与えられた。