砂糖漬け紳士の食べ方
作山とのランチから帰ると、吉報にも悲報にも取れる知らせがアキを待っていた。
どうやら伊達が取材許可の電話をしてきたらしい。
しかも今日の夕方から。なんとも突然で迷惑で、彼らしい提案の仕方だ。
「で、作品の方はどうなの?いけそうか?」
編集長は、アキからの原稿を見つつ言った。今までの伊達への取材をまとめたものだ。
「そうですね…伊達さんも大人ですし、自分で大丈夫と言ったんだから大丈夫だと思います」
「ふうん…あ、ここ、誤字」
原稿の束に一つ丸をつけ、編集長はつっけんどんにアキへそれを返す。
「展覧会の取材自体は綾子にやってもらう。後日、二人で記事内容を検討するように」
「分かりました」
「ああそういや、今回の絵…テーマって何なの?」
言われ、アキは咄嗟に眉をしかめた。
そういえば編集長に指摘されるまで、作品のテーマなるものを伊達から聞いていない。
「……オレンジ、を下塗りに使ってましたけど」
「うん」
「…すみません。失念していました」
「いや、いいよ。どうせ今日行くんだろ?その時に聞いて」
「はい」
「あ、あとこれ」
どすん。
資料が山のように積まれた机に、メロンが突如として現れた。
「先生に持ってって。編集部からお見舞いってことで。よろしくねー」