おてんば卑弥呼
始業式が終わり、下校の時間となった。
姫実は優香と帰り、途中で分かれた。一人になったのでいつもとは違う道で帰ってみることにした。
平地で自転車の利用率が多い佐賀県は、皆小さいころから自転車に馴染んでいる。
姫実もその一人で、幼い頃は大好きな祖母・トヨと一緒によく自転車で出かけたものだった。
その時のこともあり、帰り道は良く佐賀市内の中心街を通って遠回りをして帰るのだ。
呉服町や大財(おおたから)など、中心街は恵比須の像が多く建立されている。
勿論、佐賀市内の至る所に恵比須が居るのだ。
姫実はその恵比須様を通り過ぎたり、時には手を合わせたりして帰る。
幼き頃、祖母と一緒に手を合わせたり、恵比須様を撫でたりしたその思い出を甦らせながら帰るのだ。
家に着き、自転車を玄関に置いた後、境内の楠の木に向かった。
「ただいま戻りました。本日も見守って下さりありがとうございます」
手を合わせたあと、周りを見渡し…そーっと家の中に戻ろうとした時だった。
「こらー!!姫実!!おまえ、また帰りが遅かやないかぁー!!始業式だけなのに、なし、こがん遅かとかぁー!!」
「じーちゃん!やかましかて!怒鳴らんでさ!!」
境内の掃除から戻った祖父・半造に見つかってしまった。
普段は優しいが、躾や礼儀には厳しい故に、すぐに怒鳴ることが多いのだ。
「はよ昼飯ば食うて、神社の手伝いせろ!!オマエはこの神社の巫女として…」
「じーちゃん、私は【歌って話せるラジオパーソナリティ】になるので…」
「まーだ、そがんなこと言いよっか!?オマエはこの神社の中心となる巫女として…」
「わーった、わーった…巫女の仕事もする【巫女さんパーソナリティ】になりますから…。
昼ごはん食べてきまーす」
まだ何か話している半造を半ば無視して、姫実は家の中に入った。
制服を脱ぎ、私服に着替えた。
着替える時に乱れた髪を、イヨの形見である鏡を見て整えた。
「この鏡も使いだして長いなあ…。古いけど、可愛いデザインで好きなんだよね~」
丸い形の手鏡・鏡の裏は青銅で出来ており、赤や青などの石が飾られている。
今時のデザインを使っている同級生からは、「そんな古いのより可愛いのを使えばいいじゃない」と言われるが、
姫実はとても気に入っていた。勿論、形見というのもあるがそれ以上にトヨの言葉が気になった。
元々、この鏡はトヨが生前使っていたものだ。
それを姫実にトヨが突然譲った。
「いつか、お前を守ってくれて役に立つときがくるよ。大事に持っとかんね」
そう優しく微笑みながら、自分に授けてくれたトヨの事をはっきりと覚えている。
そのことが気になった姫実は、なんだか使わないのが後ろめたくなり。
トヨが亡き今も使い続けているのだった。
「…なんか、天気が真っ暗で嫌やなあ。雷も鳴っとぅし…。あっ!!??」
窓の外を見た姫実は驚いた。部屋の窓からは、境内の楠の木が見えるが、
その楠の木がとても明るく光り輝いていたのだ。
姫実は優香と帰り、途中で分かれた。一人になったのでいつもとは違う道で帰ってみることにした。
平地で自転車の利用率が多い佐賀県は、皆小さいころから自転車に馴染んでいる。
姫実もその一人で、幼い頃は大好きな祖母・トヨと一緒によく自転車で出かけたものだった。
その時のこともあり、帰り道は良く佐賀市内の中心街を通って遠回りをして帰るのだ。
呉服町や大財(おおたから)など、中心街は恵比須の像が多く建立されている。
勿論、佐賀市内の至る所に恵比須が居るのだ。
姫実はその恵比須様を通り過ぎたり、時には手を合わせたりして帰る。
幼き頃、祖母と一緒に手を合わせたり、恵比須様を撫でたりしたその思い出を甦らせながら帰るのだ。
家に着き、自転車を玄関に置いた後、境内の楠の木に向かった。
「ただいま戻りました。本日も見守って下さりありがとうございます」
手を合わせたあと、周りを見渡し…そーっと家の中に戻ろうとした時だった。
「こらー!!姫実!!おまえ、また帰りが遅かやないかぁー!!始業式だけなのに、なし、こがん遅かとかぁー!!」
「じーちゃん!やかましかて!怒鳴らんでさ!!」
境内の掃除から戻った祖父・半造に見つかってしまった。
普段は優しいが、躾や礼儀には厳しい故に、すぐに怒鳴ることが多いのだ。
「はよ昼飯ば食うて、神社の手伝いせろ!!オマエはこの神社の巫女として…」
「じーちゃん、私は【歌って話せるラジオパーソナリティ】になるので…」
「まーだ、そがんなこと言いよっか!?オマエはこの神社の中心となる巫女として…」
「わーった、わーった…巫女の仕事もする【巫女さんパーソナリティ】になりますから…。
昼ごはん食べてきまーす」
まだ何か話している半造を半ば無視して、姫実は家の中に入った。
制服を脱ぎ、私服に着替えた。
着替える時に乱れた髪を、イヨの形見である鏡を見て整えた。
「この鏡も使いだして長いなあ…。古いけど、可愛いデザインで好きなんだよね~」
丸い形の手鏡・鏡の裏は青銅で出来ており、赤や青などの石が飾られている。
今時のデザインを使っている同級生からは、「そんな古いのより可愛いのを使えばいいじゃない」と言われるが、
姫実はとても気に入っていた。勿論、形見というのもあるがそれ以上にトヨの言葉が気になった。
元々、この鏡はトヨが生前使っていたものだ。
それを姫実にトヨが突然譲った。
「いつか、お前を守ってくれて役に立つときがくるよ。大事に持っとかんね」
そう優しく微笑みながら、自分に授けてくれたトヨの事をはっきりと覚えている。
そのことが気になった姫実は、なんだか使わないのが後ろめたくなり。
トヨが亡き今も使い続けているのだった。
「…なんか、天気が真っ暗で嫌やなあ。雷も鳴っとぅし…。あっ!!??」
窓の外を見た姫実は驚いた。部屋の窓からは、境内の楠の木が見えるが、
その楠の木がとても明るく光り輝いていたのだ。