空芽







今までの人生の中で

本気になった女とか

自分が見えなくなるほど

何かに熱中したりだとか




ないから。








よく、
冷めてんね、て。







でもさ、なる必要
あんのかなって。







屁理屈、
考えちゃうんだよね。












でもそんなん
なくてもさ、







トントンッ



「あの、
零センパイですか?」










みーんな
俺を知ってんの。











染めてない、
天然の綺麗な髪に

高校には似合わない
セーラー服。









そういえば今日って

中学生の説明会

だったんだっけ。












「うん、そうだよ?」










俺が雪野零だと
確信した瞬間に

目を細くして柔らかく
笑う女の子。







かわいーな、て。






お世辞なんかじゃなく。

純粋そうだな、って。










でもさ、俺を
知ってる時点で

アウト。










「よかったぁ、
違かったら
どうしよって。

あ、私、
笹野なか、って
いいます。

私、春から
ここ通いますから!」









まだ、夏なんだけど。



自信たっぷりに
言うんだ。










「そしたら、
入学したら、私と
付き合って下さい!」



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