鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
どうにかして動きを止めなきゃ!
あたしは魔物に捕まらないよう、周りを走って避けながら魔物へ攻撃を続ける。
けれど、どれも効いてないみたい。
どうしよう。
でも、弱気になっちゃダメ!
「りん! 横だ!」
「──あっ」
絖覇が叫んで、気づいたときには、目の前に大きな腕が迫っていた。
──ドガァァア!
「ぐはっ・・・・・・!」
その腕にあたしはまるで野球のボールを打つみたいにして、吹き飛ばされた。
背中に強い衝撃を受けて、視界が一瞬にしてホワイトアウトする。
意識が遠退きかけた。
肺の中の空気も、さっきの衝撃で全て押し出されてしまい、呼吸がうまくできない。
渇いた喉が、ヒューヒューと荒い呼吸を繰り返すだけだ。
身体が・・・・・・痺れて動かない・・・・・・。
目を閉じれば、今すぐ深い深い眠りの奥底へと沈んでしまいそうだ。
けれど、魔物は次の攻撃体勢へともう移っていた。
大きく腕を振りかぶり、あたしがもたれ掛かっている大木共々吹き飛ばしてしまおうとしていた。