鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
あたしをナトの横に下ろすなり、絖覇は再び魔物と向き合う。
魔物はまだ、絶叫していた。
自分が攻撃したはずなのに、逆に反撃を受けたから、精神が崩壊したんだ。
あたしはというと・・・・・・。
呆気に取られてしまっていた。
そう。
絖覇の変貌ぶりに。
なに、あれ。
あの人は本当に絖覇なの?
いつもふざけた、チャラチャラした笑顔しか顔に出さなかったはずなのに、さっきの表情・・・・・・。
あの、真剣そのものの顔つき・・・・・・。
そして、あたしが聞いたこともないような、低い声。
それに絖覇が片手で魔物の攻撃を止めたことも、理解出来ていない。
魔物の腕力は、軽く一撃するだけで、大地を穿(うが)つ。
普通、人がまともに攻撃を受ければ、身体の原型など、留めることは出来ないのに・・・・・・。
それなのに・・・・・・。
考え事をしていたあたしの前では、凄まじい戦いが繰り広げられていた。