鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「よかった・・・・・・」
魔物がいなくなったことで、見事に破壊されつくしている森はキレイさっぱり再生された。
それに気づいたとき、口から安堵の溜め息が漏れてしまった。
そして・・・・・・それと同時にふんわりとした温もりに包まれる。
嗅いだことのあるシャンプーの香りが、鼻孔をくすぐった。
「絖覇・・・・・・」
あたしは絖覇に抱きしめられていた。
(ただし、絖覇の方が小さいので後ろから抱き着かれた感じになってしまった)
「りん・・・・・・」
凛々しい声が、耳もとで囁かれる。
まだ慣れない“男の人”の声に、かあっと体温が上がってしまう。
そんな艶っぽい声で、あたしの名前を呼ばないで・・・・・・。
「今日はもう、学校いけないだろ」
「でも・・・・・・出席しないと・・・・・・」
「バカいえ。 フラフラじゃねぇか」
言われてから、気づいた。
今、絖覇が抱きしめてくれているからなんとか立っていられるけど、離されてしまったら、あたしはたぶん地面へと倒れ込んでしまうだろう。
それでも・・・・・・学校、いっとかないと・・・・・・。
諦める様子のないあたしに「はぁ」と絖覇は呆れたように溜め息をついた。
「じゃあ、今日は保健室で寝てろ。
あんまりキツイなら、家に帰れ」
「・・・・・・うん」
それならいいや、とあたしは頷いた。
そして、ふと思う。
「ナトは? どうするの?
そういえばさっき、強く頭を打って・・・・・・!」
慌てて、ナトの方を見ると、ムクリと身体を起こしたのが見えた。
「ナト!」
「は、れ? りんりん?
っ! そういえば魔物は!?」
起きた途端、ナトは素早く飛び上がった。
それを見て、あたしは彼女に笑顔を向けた。
「大丈夫よ。
無事に浄化できたわ。
ナトが抑えていてくれたおかげ」
「えへへ」と、嬉しそうな表情で、髪をクルクルと指で弄ぶナト。
これは照れたときの、彼女のクセ。
そして、急に真顔になった。