鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「それはそうと・・・・・・お二人さん。
なんで──抱き合ってるワケ?」
「あわっ、あのこれは・・・・・・」
すっかり忘れていたあたしは、羞恥で慌ててしまって言葉がうまく出てこない。
「りんが倒れそうなんだ。
だから、支えている」
さらりと絖覇は言い放った。
「・・・・・・そうなんだ?
てか、りんりん! そんなにツライなら、帰った方がいいよ!」
「ありがとう。
でも、一応登校するね。
本当に辛くなったら、今度こそ帰るから」
彼女に笑いかけると、彼女もフニャリと笑って返してくれた。
よかった・・・・・・元気みたい。
ナトは女の子の姿から、美少女へと変身した。
女の子の姿──つまり本来の姿の方が力を発揮できるらしい。
だから、戦ってたときは女の子の姿だった。
「んじゃ、行くか!」
「きゃあ!」
絖覇はあたしを急にお姫様抱っこすると、裏山の入り口に向かって歩きだした。
その後ろから、なんだか嬉しそうな顔をした、ナトがついて来る。
戦ってたときの絖覇じゃなくなってる・・・・・・。
この調子は・・・・・・いつものチャラい絖覇・・・・・・。
この絖覇はたぶんなに言っても聞いてくれない。
それに、絖覇と言い合いして暴れる体力とか、まともに残ってないし。
あたしは素直に絖覇に抱き上げられたまま、学校へと向かった。