鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
そして、結局あたしは1時間も授業に出ることは出来なかった。
驚いたことに絖覇が、あたしが授業に出ないことを先生に言っておいてくれたらしい。
それに保健の先生にも
「りんさんが、体調悪いそうなので、そっとしておいてください」と言ってくれたんだ。
だから、先生いなかったのね。
しばらく、沈黙が続いてから先に口を開いたのは絖覇だった。
「──俺、鞄取りに一回教室行ってくる」
「あ、うん。 行ってらっしゃい」
その言葉に、強く抱きしめていた腕をゆっくりと離す。
もう、少しだけ・・・・・・。
『一緒にいてほしい・・・・・・』
思わず喉まで出かかった、言葉を飲み込む。
今、誰かの体温に縋り付いていたい・・・・・・。
けれど、絖覇を引き止める理由がうまく思い浮かばず、再び伸ばしかけた手を引っ込めた。
「──りん」
「へっ?」
こちらを振り返った絖覇は、ニヤリと笑った。
「なに? まだ俺に傍にいてほしいの?
積極的だな、おい」
な゙っ・・・・・・!?
なにを言うの!
「そ、そんなワケっ!」
「ふーん」
疑った様な目つきで、眼鏡越しにあたしを睨みつける。
怖いって!
また前みたいなお仕置きすんの?