鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




 思わず、絖覇に気付かれないように拳を強く握りしめる。


 けれど、絖覇は


「ま、いっか。 ここで待ってろよ」


 と言って、さっさと保健室を出て行ってしまった。


 

 本当なんなの?


 あいつ、Sかっての!


 あたしイジメて楽しんでる!


 チャラ男!


 変態!


 ドS!


 あー、もう!


 
──バフン!



 拳で布団を叩くと、埃が舞い上がった。


 あ、くしゃみ出ちゃうや。


 慌ててパタパタと顔の前で手を振って、埃を振り払おうとする。



 そのとき。



──ガラリ。


 
 保健室のドアが開いて、誰かが入ってきた。


 絖覇かな?


 早かったじゃん。


 というか、一発叩く!


 けれど、それは絖覇ではなく、保健室の先生だった。



「元気になった? 黒木さん」



「あ、はい」



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