鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




 保健の先生は、まだピチピチの20代。


 明るい栗色に染めた、肩までのフワフワの髪を揺らす彼女は学校の男子の中ではアイドル的存在。


 サッパリとした性格で、先生にも生徒にも人気だ。


 彼女が一度笑えば、それを見た男子は失神するという、まるで魔術のような笑顔。


 漫画の世界ですか?って感じ。


 けれど、漫画と違うのは女子に妬まれたりせず、全体的に人気。


 なぜなら、彼女は──女子が大好きだから。


 女子にはとんでもなく甘い。



「ほらー、黒木さん。


 特別に飴あげる♪

 
 みんなには、秘密だよ!」


 バチーンと、自前のバサバサの睫毛の並んだ瞳を閉じる。


 おお、すごい。



「ありがとうございます」



 あたしは素直に飴を受けとった。


 そのままポケットに飴を入れようとしたら、飴を取り上げられた。



「遠慮せずに!


 ほら、あーん♪」


「ムグ!?」



 小さな可愛い包装紙を開けると、彼女はあたしの口の中に飴をほおりこんだ。



 レモンの甘酸っぱい味が、口の中に広がっていく。


 あ、おいひ。


 
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