鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
無事に学校が終わって、放課後になった。
あたしは部活に入っていない。
教室を出ようとしたとき、ふと用事を思い出してもう一度教室を覗き込んだ。
「っ、絖覇!」
「なに? りん」
なんと、あたしと絖覇は同じクラスです。
呼びかけると、絖覇は喋っていたクラスの男子に何か一言言うと、あたしのほうへと歩いてきた。
別に来なくてもよかったのに。
そんな不満が喉まで出かけて、慌てて飲み込んだ。
「今日あたし早く帰らなきゃいけないの。
だから、先に帰るね」
何気に絖覇はあたしと一緒に帰ろうとしている。
スポーツ万能なのに、どこの部活にも入っていない。
4月のとき絖覇への勧誘、ひどかったなぁ・・・・・・。
ああ、もうこんな時間!
スマホを見ると、もう5分経っていた。
「じゃ、帰る、ねっ!?
こ、絖覇?」
走ろうとして、廊下を向いたら身体がガクンと止まって絖覇があたしの手を掴んでいた。
なに?
遅くなっちゃうよ!
「俺も一緒に帰る」
「え? 今あの人と話してたじゃん。
いいの?」
「いいの」と言って、絖覇は鞄を掴んで来ると、あたしを引っ張って昇降口に出た。