鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
魔物狩り
外は夕焼けで茜色に染まり、烏が何羽か群れになって山の方へと飛んでいく。
あの烏たちには、帰る家があって、家族がいて。
きっと巣で子烏が、母親の帰りを待っている。
普通に家族がいて、仲良くしていられただけで幸せだったんだ。
日常が、当たり前になっていたあたしには、その日常がどんなに幸せなことであるか、思い知らされた気がした。
あたしは、恵まれた環境で、育ててもらってたんだ。
そのことが、強く胸を締め付けた。
そして今、絖覇が隣にいてくれていることも・・・・・・きっと当たり前じゃないんだね。
この日常を大切にしていこう。
また、後悔しないように。
「絖覇・・・・・・」
「ん? どうしたんだ?」
彼を呼び止めると、夕焼けをバックに彼はこちらを振り返る。
「ありがとね」
「なんだよー、急に」
「別にっ! 言いたくなっただけ」
「・・・・・・ふーん」
いつも言えない分の『ありがとう』を込めて。
ありがとう。