鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
家に帰ると、ナトとお父さんとムギがいた。
絖覇も、過去へ行くためにあたしの家に来ている。
そして、お父さんに今日のことを報告した。
「・・・・・・また、魔物が出たのか」
「うん。
今日は、学校の裏山だったんだ。
ナトがどうにか抑えてくれてたから、他の人に被害はないと思う」
ご飯を食べ終わり、お茶を飲んで一息つく。
そして、報告が終わると、あたしたちは過去へ行くことになった。
けれど、驚いたことをムギは口にする。
「これから、過去に行くんだけど・・・・・・今日は別行動してもよいかしら?」
「えっ!」
確かにナトの力があれば、ムギの力がなくても過去へ行けるけど・・・・・・。
どうしても心細くなってしまう。
「大丈夫! 今回だけだわ!
・・・・・・絶対、とは言いきれないんだけどね・・・・・・」
ムギは、苦笑いを浮かべる。
たぶん、ムギにはムギの事情があるんだよね・・・・・・。
「──わかったよ」
「ありがとう!」
頷くと、ムギはパアッと表情を綻ばせてあたしに抱き着いた。
フルーツの香りが、全身を包み込む。
あたしもつられて笑ってしまった。