鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




 男の教えてくれた場所は、なんと、あの祠だった。


 
『なんでもあそこの祠は特別なところらしいんだ。


 まぁ、俺は庶民だからあそこは入れねぇけどな』



 さっき、男の人が言ってた。


 つまり、ムギが奉られてるから大事な場所なんだ。


 特に、あの双子としては、ムギと会える唯一の場所。



 きっと、必死に守ろうとしてるはず。



 早く、早く行かなきゃ・・・・・・!


 自然と足に力が入る。



 あたしは駆け出そうとした。


 けど・・・・・・。



「待てっ!」



「ぐぇっ!」



 絖覇に服を掴まれて、ヘンな声が出てしまった。


 今度はなに?



「走っていくより、ナトの力で行った方が速い」


「任せて。 最速で行くから」


 ナトがグッと親指を立てる。


 絖覇・・・・・・ナト・・・・・・。


 忘れてたよ。


 一人で突っ走るよりも、みんなで頑張るんだ。



──パチン。



 ナトが指を弾くと、景色が一瞬にして変わった。



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