鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




「わかった!」



 立ち上がると、曾爾に向かって叫んだ。


 返事は聞こえなかったものの、曾爾からお礼の言葉が聞こえた気がした。


 あたしは両手を組むと、いつものポーズをした。


 (お願い、浄化してっ!)


 
──パァアアッ!


 光が左手のブレスレットから溢れ、魔物とあたしを包み込む。


 っ・・・・・・!


 やっぱり魔物が弱ってないから、吸い取られる霊力の量が多い!

 
 それでも・・・・・・!


 まずは一体から!


 光が弾けたとき、魔物の姿は無くなっていた。



「曾於!」



「くっ、はな・・・・・・せっ!」


 
 絖覇の声が聞こえた方へと顔をやると、曾於が魔物の蔦に絡めとられていた。


 絖覇が霊力でマゼンタ色の炎を生み出し、その蔦を燃やしていく。


 けれど、蔦が燃えても魔物はどんどん蔦を増やして曾於を締め付けていく。


 曾於の顔が分からなくなるくらい、蔦は彼を覆っていた。


 助けなきゃ!



「──ちっ!」



 絖覇は短く舌打ちすると・・・・・・眼鏡を投げ捨てた。


 妖艶なマゼンタ色の瞳があらわになる。


 その瞳で、絖覇は魔物を──睨みつけた。



「グ、ル・・・・・・!」



 途端に魔物の動きが止まる。


 なにしたの、絖覇!



 その隙を見逃さなかった絖覇は、炎の火力を一気に上げた。


「グオァアァ!!!」



 あっという間に曾於に絡み付いていた蔦は、一瞬で消え去った。


 それと同時に曾於が魔物から逃れ、その手には何かの呪文が書かれたお札が挟まれていた。



「永劫術!──浄化!」



 曾於が叫ぶなり、お札は魔物のおでこ(らしきところ)に張り付いて、発光した。


 光がなくなれば、魔物が浄化されていた。



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