鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





 それを自然に掴み、雪華をユラリと構える。


 か、カッコイイ!


 その一言に限る。


 いつもはおどけた子供っぽい顔つきだったのに、剣を握るなり別人の顔つきになった。


 そして、


「やあ! はっ!」


 優雅な剣舞を披露してくれる。


 滑らかでムダがなくて、まるで舞を踊っているよう。


 青の髪が泳ぎ、簪がシャラリと高い音を奏でる。

 たぶん他の人が剣を振り回してたら怖くて逃げ出すだろうけど、曾爾の剣舞はあまりにキレイすぎて見とれてしまった。



「どう?」


「カッコイイ・・・・・・カッコイイよ!


 なんでそんなに剣が上手いの?」



 あたしはつられて自然と拍手をしていた。



「えへへ」


 褒めると素直に喜ぶ曾爾。


 剣は左手に持ったままだけど、もうすっかり子供の顔つきになっている。



「やっぱり、ちっちゃい頃からやってるってのもあるけと・・・・・・不老不死の力のせいもあるかな」


 そういって曾爾は剣を空高く放り投げた。


 えっ、なにやってるの曾爾!


 落ちて来たら、雪華壊れちゃうし・・・・・・。


 それに、人に当たったら・・・・・・。


 うわ。


 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!!



 雪華は空の彼方で太陽の光を受けて、キラリと光ったかと思うと、刃先をこちらに向けて・・・・・・急降下してきた。


 ぎゃ━━━━っ!


 刺さる、刺さる!



「やっ!」



 雪華はそのまま──曾爾の上に突き刺さった。



「曾爾っ! って、え?」



「えへへ、大丈夫だったでしょ?」


 思わず閉じてしまった目を開くと、曾爾はニコニコと笑っている。


 見る限り、どこにもケガはない。


 そして空に掲げられた左手には、雪華が握られていた。




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