鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~



 


 
「そーお!」



「わっ、何? りん姉ちゃん」



 曾於に抱き着くと、曾於は驚いた表情をする。


 心なしか、顔が赤くなってるような・・・・・・。


 熱でも、あるの?

 
 なわけないか。


 
「どうしたの?

  
 なんか、あった?」



「別にないですよ。


 そ、それより、離れてっ!」



「えー? なんで?」



 曾於にどうしても!と言われてあたしは渋々離れた。


 
「曾於ったら、本当にもう!」



 曾爾がぷくーっと、頬を膨らませた。


 もうなんなの?


 本当にこの双子、可愛すぎ!




「こら、りん! 話に集中しろ!」




──ベシッ。



「あてっ! 叩かなくても・・・・・・」




 絖覇はあたしの頭を軽く叩いた。


 てか、今あたし、絖覇に怒られた!?


 ドタバタとした時間がムダに過ぎ──やっと落ち着くと、話が再開した。



「りん姉ちゃんに見てもらいたい書物があるんだけど・・・・・・」



「ん? なに?」



 曾爾に呼ばれて、彼女の周りにみんなが集まって書物を覗き込む。


 その書物の表紙には、読みにくいけど・・・・・・『番人なんとか』って書いてある。


 『番人』のあとは、墨が掠れてしまって、読むことが出来なかった。


 
 書物の中を開くと・・・・・・。



「うっ」



 相変わらず、読むことの出来ない複雑な古文。


 やっぱり曾爾と曾於にはスラスラと読めるようで・・・・・・。


 あたしたちにも理解出来るよう、訳してくれる。


 

「今まで、番人は代を変えてムギを護ってきたわ。


 古代からだから・・・・・・もう何千代とかかも」


 
 な、何千代・・・・・・。


 それは、どれくらいの長さなのだろう。


 まだ、たった15年しか生きたことのないあたしには、とても想像も出来ない。




「私たちの一代前は・・・・・・誰だったっけ? 曾於」



「──紅葉姫と、芳昭(よしあき)様じゃなかったか?」


 曾爾に話をふられた曾於は、しばらく考え込むと、ぽつりと言った。


 紅葉姫と、芳昭さん・・・・・・?



「その番人たちは、何年くらいムギの番人をやってたんだ?」



 絖覇が隣で乗り出て、曾爾に質問する。




< 147 / 445 >

この作品をシェア

pagetop