鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「そーお!」
「わっ、何? りん姉ちゃん」
曾於に抱き着くと、曾於は驚いた表情をする。
心なしか、顔が赤くなってるような・・・・・・。
熱でも、あるの?
なわけないか。
「どうしたの?
なんか、あった?」
「別にないですよ。
そ、それより、離れてっ!」
「えー? なんで?」
曾於にどうしても!と言われてあたしは渋々離れた。
「曾於ったら、本当にもう!」
曾爾がぷくーっと、頬を膨らませた。
もうなんなの?
本当にこの双子、可愛すぎ!
「こら、りん! 話に集中しろ!」
──ベシッ。
「あてっ! 叩かなくても・・・・・・」
絖覇はあたしの頭を軽く叩いた。
てか、今あたし、絖覇に怒られた!?
ドタバタとした時間がムダに過ぎ──やっと落ち着くと、話が再開した。
「りん姉ちゃんに見てもらいたい書物があるんだけど・・・・・・」
「ん? なに?」
曾爾に呼ばれて、彼女の周りにみんなが集まって書物を覗き込む。
その書物の表紙には、読みにくいけど・・・・・・『番人なんとか』って書いてある。
『番人』のあとは、墨が掠れてしまって、読むことが出来なかった。
書物の中を開くと・・・・・・。
「うっ」
相変わらず、読むことの出来ない複雑な古文。
やっぱり曾爾と曾於にはスラスラと読めるようで・・・・・・。
あたしたちにも理解出来るよう、訳してくれる。
「今まで、番人は代を変えてムギを護ってきたわ。
古代からだから・・・・・・もう何千代とかかも」
な、何千代・・・・・・。
それは、どれくらいの長さなのだろう。
まだ、たった15年しか生きたことのないあたしには、とても想像も出来ない。
「私たちの一代前は・・・・・・誰だったっけ? 曾於」
「──紅葉姫と、芳昭(よしあき)様じゃなかったか?」
曾爾に話をふられた曾於は、しばらく考え込むと、ぽつりと言った。
紅葉姫と、芳昭さん・・・・・・?
「その番人たちは、何年くらいムギの番人をやってたんだ?」
絖覇が隣で乗り出て、曾爾に質問する。