鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




「ムギ・・・・・・」



「今、りんが話したことは曾爾の持っていた書物に記されていた、紛れも無い真実です。


 ムギが知っていたなら、双子にそのことを伝えようと思っていたのですが・・・・・・」



 絖覇は静かに、言った。



「ムギ・・・・・・本当に何も、知らないの?」



 期待の意味を込めて、同じ質問をまた、繰り返す。


 だいぶ落ち着いたムギは、コクリと頷いた。



「ええ、知らないのよ、本当に。


 何も分からなくて・・・・・・。


 『知らない』、と言うより『分からない』のよ」



「『わからない』?」



「そう。


 番人たちはもちろん、全員覚えているわ。


 でも、それ以外記憶にないの」



 記憶にない・・・・・・?


 知らない。


 わからない。


 記憶にない・・・・・・。



 この謎を唯一解けるのは、古代から生きているムギしかいないハズなのに・・・・・・。



「そうだよな・・・・・・」


 そういって、絖覇は頷いた。


 へ?


 何に頷いた?


 絖覇の顔を覗き込めば、



「お前、声に出てた」



 と、睨まれた。



 うあ、声に出てたのか。


 やっちゃったな。



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