鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
自分の部屋に入るなり、あたしはベッドへと倒れ込んだ。
霊力のことはわかっていた。
けれど、あんな人ならざるものがいるなんて、到底信じられない。
でも、お母さんのあの反応・・・・・・。
昔、お母さんに何があったの?
「はぁ・・・・・・わかんないや」
溜め息が、気付けばこぼれていた。
──ピーンポーン。
そのとき、家のチャイムがなった。
誰か来たのかな。
身体を起こして耳をかたむける。
男の人みたいな声。
お父さんかな?
でも、まだ5時だし、いくらなんでも早すぎる。
「りんー?
絖覇君が来てくれたわよー!」
え。
その言葉に思考停止。
なんで来たのよー!
なんてこと、言えるワケもなく。
小さいときから、お互いの家は毎日のように行き来していた。
だから今来ても、別に自然なんだけど、この忙しいときにっ・・・・・・!
ドアを睨みつけていると、トン、トン、と軽い足音が階段を上ってきた。
え、ちょっと待って。
勝手に来たの?
──ガチャリ。
「よう、りん」
「・・・・・・ども」
ドアが開いて現れたのは、紛れもなく、笑顔の絖覇だった。