鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
ふぅ~、終わったぁ・・・・・・。
だいぶ暑くなってきたせいで、少し動いただけでも汗が噴き出してくる。
「はあ━━っ、疲れた━━━っ!」
家に着くなり、バタリと玄関に突っ伏した。
「おい、りん!
こんなとこで寝るなっ!
ちゃんとベッド行け」
「えー」
そんなこと言われても、疲れちゃったもん。
動くのもダルい・・・・・・。
霊力も結構消費しちゃってるし・・・・・・。
最近、魔物の出現することが多くなってきている。
一週間くらい前なら、一週間に1回か2回、そして現れるのは1~2匹くらいだった。
なのに、最近は・・・・・・ほぼ毎日、しかも1回に現れるのが5~6匹が当たり前になってきている。
これは毎日学校に行き、勉強しながらのあたしには結構キツイ。
しかも、お母さんのためのムギに力を送る祈りはなくなったものの、お母さんには霊力をちょっぴり送っているから、毎日霊力は底を尽きそうだ。
「最近、本当におかしいかも。
ママが言ってたけど、魔物は影の世界っていう、封印された世界にしかいないハズなんだよね。
でもたまに、こちらの世界と繋がっている『扉』をこじ開けてこちらの世界に来てしまう魔物がいるみたい。
それをりんりんが退治してるけど、この数は余りにも異常だと思う」
ナトが珍しく、低い声で言うと考え込んでしまう。
確かに、あたしが知っている『鈴姫の記憶』でも、ナトが言っていたことと同じ。
魔物はお母さんたちによって、影の世界に永遠に封印されたハズだったのに・・・・・・。
最近、本当に何かがおかしい。
変わり始めている。
この、世界が。
まるで、何かの前兆のよう・・・・・・。
そのとき、突然フワリと身体が浮いて・・・・・・。
「っきゃ!」
「っよし、早くりんの部屋に行くぞ」
耐え兼ねたのか、絖覇があたしをお姫様抱っこをして、階段を上り始めた。
あたしの部屋へ向かっている・・・・・・。
もう何度も行き来したことのある絖覇は、迷いなくどんどん進んでいくと、あたしの部屋の前で止まり、器用に部屋のドアを開けた。
その後ろから、ナトもフワフワと入ってくる。
そのまま、あたしはベッドの上へと下ろされた。