鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





「一人で行くなよ」



 耳もとで聞こえた低い声。


 これは魔物と戦うときにしか出さない──絖覇の声。


 あたしは絖覇に後ろから抱きしめられていた。



「キャーッ! あの二人・・・・・・」


「あれって、絖覇くんじゃない!?」



 途端に聞こえる女子たちの悲鳴。


 でも、今それを気にするヒマもないくらい、あたしは硬直していた。


 ・・・・・・絖覇、あたしを抱きしめてる?


 みんなの前で?


 ・・・・・・Why?



 そのまま、彼はあたしの手を掴むと、ズルズルと空き教室の方へと引きずっていく。



 そして、教室に押し込まれた。



「──絖覇?」



 
< 176 / 445 >

この作品をシェア

pagetop