鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「一人で行くなよ」
耳もとで聞こえた低い声。
これは魔物と戦うときにしか出さない──絖覇の声。
あたしは絖覇に後ろから抱きしめられていた。
「キャーッ! あの二人・・・・・・」
「あれって、絖覇くんじゃない!?」
途端に聞こえる女子たちの悲鳴。
でも、今それを気にするヒマもないくらい、あたしは硬直していた。
・・・・・・絖覇、あたしを抱きしめてる?
みんなの前で?
・・・・・・Why?
そのまま、彼はあたしの手を掴むと、ズルズルと空き教室の方へと引きずっていく。
そして、教室に押し込まれた。
「──絖覇?」