鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
でも、それは単なる期待に過ぎなくて。
また、『絖覇はあたしが幼なじみだからほっておけない』と思っているんだ、という気持ちがジワジワと心の奥から染み出してきてしまう。
「・・・・・・それは、“幼なじみ”だから?」
気付けば、声が溢れ出ていた。
え、あたし、今何言って・・・・・・。
そう思ったときはもう遅い。
絖覇は眼鏡ごしでもわかるくらい、目を見開いていた。
「どういうことだ」
「・・・・・・だから、あたしが悲しむのがいやなのは、幼なじみとしての感情なの?」
それでも、口が止まらない。
水で満杯のペットボトルに針で穴を開けたように、次々と溢れ出て止まらない。
すると、彼は眼鏡を外した。
そして・・・・・・顔を近づける。
「ッッ!」
マゼンタの瞳が、すぐ目の前にあり、体温があっという間に上がっていく。