鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「っ! りん!」
驚きでアイスキャンディーを落としてしまい、アイスはスルスルと床を滑っていく。
おぼんを床に置いた絖覇が、素早い動きであたしの前に立ち塞がった。
これは・・・・・・瞬間移動・・・・・・。
誰かが、ここに来たんだ・・・・・・。
直感でそう思う。
絖覇はといえば、眼鏡を外すと霊力を解放した。
そして、マゼンタの瞳で鋭くその誰かを睨みつける。
誰・・・・・・?
絖覇のシャツをわずかに掴むと、彼の肩ごしに居間の中央を見つめた。
光が炸裂したことによって煙が発生し、人影が見えるものの、それが誰なのか、男の人なのか女の人なのかすら、わからない。
ただ、恐怖が奥の方からせり上がって来る。
「誰だ、お前は」
絖覇があの低い声を出して、相手を脅す。
けれど、
「・・・・・・・・・・・・」
相手は一言も発さない。
そしてしばらく沈黙が続いたかと思うと・・・・・・。
──ボムン!
再び破裂音がして、そこから人影はなくなっていた。