鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




 けれど、彼がどいてくれる気配はない。



「りん・・・・・・」



 その声は、いつもより艶っぽく聞こえてしまう。


 身体が熱くなっていく。



「え、ちょっと っ!」



 絖覇は突然あたしの首筋に顔を埋めた。


 軽く唇を当てられ、急激に鼓動が大きくなった。




「やめ、てっ!」



 今度こそは、力いっぱい絖覇を押し返し、その下からはい出る。



「・・・・・・何なのよ」




「ククッ、りん、顔真っ赤」



「え?」



 慌てて顔に手をやると、いつもより熱っぽいことに気がついた。



「誰のせいだと思ってるのよ!」



 絖覇を思いっきり睨むけど、彼は意地悪な笑みを浮かべたまま。



「かわいい」



「っ!?」



 今度こそ、失神するかと思った。


 なによ、絖覇は何がしたいの?


 そんな質問が頭に浮かんだけど、全て消え去ってしまった。




「そんなに怒んなよ」



「はあ?」



「いつものことだろ?」



 確かにいつも絡んで来るけど。


 こんなこと、されたことない。


 
「じゃあ、それだけ」と絖覇はさっさと部屋を出て行った。


 
 なんだったの?


 
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