鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





「・・・・・・ここが“天界”・・・・・・ですか?」



 ポカン・・・・・・と、口をだらし無く開けた伯がポツリとつぶやいた。


 あたしも、呆気に取られてしまった。


 ここ、天国?


 目の前に広がるのは、今までに見たことのない絶景。


 青いグラデーションの空に浮かぶ、空島。


 真っ白な壁のお城が、そこに堂々と鎮座していた。



 あのあと、伯を連れ、あたしとお父さん、絖覇と共に天界へと向かった。


 ナトは、天界が自宅の為、天界に着いたら案内してくれることになっている。


 そこまでは行ったことのある、お父さんの案内で行くことになった。


 そして、目にしたものは、今まで見たものとは格段に違うものだった。




 天界は二つの空島からなっていて、大きな一つの島には白い壁の青い屋根のお城がある。


 そのお城の屋根のほとんどは失われている。


 これは・・・・・・22年前、お母さんたちが女神と戦ったときの傷痕・・・・・・。


 あの時のまま、お城は変わっていなかった。


 お父さんを見ると、わずかに顔をしかめていた。


 もう過去のことだとしても、お父さんには痛々しい傷痕には変わりないんだ。


 きっと、お母さんのことを思い出しやすいのだろう。


 お父さんはしばらくの間、お城を眺めていた。



 
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