鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
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「りん~?
起きたのー?
学校、遅れるわよー?」
「っ、今行くー!」
階段の下で、お母さんが叫んでいる。
あたしはそれに応えて、慌てて制服を着込んだ。
鏡で髪型をチェックする。
・・・・・・よし。
寝癖直ってる。
お母さん譲りの茶色くて、肩くらいの長さの髪を、手ぐしでまとめる。
そしてお母さんが呼んでいた一階の居間へと駆け込んだ。
「ごめん、ごめん。
遅くなっちゃった」
「もう、早くご飯食べなさい」
お母さんは、眉を下げてあたしを見下ろすと、キッチンへと戻っていく。
「はーい」と小声で返事をすると、ダイニングテーブルの一つの椅子についた。
テーブルの上にはたくさんのごちそうが並んでいる。
お母さんの料理は上手でおいしいし、健康的だから、たくさん食べなきゃ!
箸を持つと、目の前の席にはお母さんが座った。
「いただきます」
あたしの名前は黒木りん。
まだ15歳だけど、2月になれば、16歳。
つまり、高校生一年生。
そして、お母さんはすずかという名前。
専業主婦なんだ。
あたしのお父さん、千は実は会社に勤めてたんだけど、もう一つやってた仕事、モデルが大成功してそっちに専念することになったんだ。
だから、あまり家にはいない。
あたしとお父さんとお母さんの三人家族。