鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




「す、げー・・・・・・」



 伯が、呆れたようにため息をついた。


 絖覇も珍しくポカンとしている。


 門の横には、純白の翼をその背に生やした天使が、重そうな槍を持ち、表情を硬く変えないまま立っていた。


 て、て、天使が・・・・・・!


 本物がいるぅぅううう!


 しかも、天使って本当に整った顔をしている。


 男の人なのに、女の人と間違えてしまいそうな美しさ。


 まるで作り物のようなその顔に、思わずうっとりと見とれてしまう。




「おい、りん」



「げ、絖覇」



 ジロジロと天使を見ていたら、絖覇にむんずと肩を掴まれた。



「迷惑そうにしてるだろ」



「え? 表情変えないじゃん」



「・・・・・・バカ」



「はあぁあああぁぁ?」



 どういうこと?


 理由を教えてくれない絖覇は、先に歩いて行ってしまったお父さんと伯を追いかけてあたしを引きずっていく。


 もっと見てたかったのにぃいい!


 けれど抵抗も虚しく、あたしは絖覇に強制連行された。



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