鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




「・・・・・・・・・・・・」



 あたしを抱きしめている人は、何も言わない。


 恐る恐る、硬く閉じていた目を開けた。



「ッッ・・・・・・!」



 あたしを抱きしめていたのは、絖覇だった。


 彼だと気づいた瞬間、ドキドキと鼓動が高鳴る。


 だって、あたしは絖覇の胸に倒れ込むようにして、彼に抱きしめられていたから。


 
「こう、は? どうしたの?」



 なぜだか、いつもと同じ雰囲気ではない気がして、あたしは震える声で呼びかけた。


 何があったの?


 彼の身体は微かに震えている。


 ドク、ドク、ドク、と合わせた胸から、鼓動が伝わってきた。


 これは、あたしの音?


 それとも、絖覇の・・・・・・?




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