鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
もう何年も行き来した家だ。
絖覇の部屋は目をつぶっててもいける。
階段を上ると、彼の部屋のドアに手を掛けた。
──ガチャ。
「・・・・・・・・・・・・」
──ガチャ、ガチャ。
「・・・・・・・・・・・・開けてよ!」
鍵がかかっていて開きませんでした。
痺れを切らしたあたしは、激しくドアノブをガチャガチャやりながら、叫んだ。
出てこい、篭るなぁ!
「──りん?」
「あ、絖覇!?
開けて、過去へ行こう。
久しぶりにムギに会いに行こうよ」
か弱い声がしたと思ったら、すぐに静まってしまった。
「絖覇?」
「わりぃ、出てって」
「え?」
驚きで、彼の言葉は右耳から左耳へと抜けていった。
「出てってくれないか、今、りんに会いたくねぇ」
心臓が、止まるかと思った。